認知機能評価

 認知機能の評価は時間と労力が必要であるため、いかに効率よく正確な評価ができるか工夫する必要がある。また評価は、できるだけ共通(標準化)したものを使う方が便利である。MCIや軽度の認知症が疑われる場合には、Mini-Mental State Examination (MMSE)や長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)では評価が難しいこともあるので、Wechsler Memory Scale (WMS-R)などの詳しい検査が必要となる。MCIの簡便な評価法としては、MoCAやACE-IIIが有効とされている。現病歴から明らかに認知症が疑われる場合にはMMSEなどの簡易検査が有効で、MMSEが20未満の症例ではWMS-Rのような時間のかかる検査は患者への負担が大きすぎると思われる。認知症の経過や治療効果の判定にはADAS-cogが使われる。ADAS-cogには認知症かどうかのcut-off値の設定がないので注意が必要である。認知機能評価には気分障害が影響するため、SDSなどの簡易なうつ状態の検査をするとともに、検査時に被験者がどのような様子であったかも記載しておく必要がある。高齢者の場合、視力や聴力に問題のあることも多く、これらがどの程度検査結果に影響したかなど、心理検査を行った検査者の意見も重要となる。こうした質問式の検査に対し、観察式(行動評価尺度)の場合は、被験者の協力が得られない状況でも評価することが可能である。Clinical Dementia Rating (CDR)、Functional Assessment Staging (FAST)などがこれに相当する。
 日本では2017年に道路交通法が改正され、疑わしい症例は医師が診断書を提出することになる。この中にはMCIの症例も含めれている可能性があるため、認知症かどうか疑わしい場合には詳しい認知機能検査をして慎重に診断を進める必要がある。認知症に限らず、外傷後の高次脳機能障害、脳外科治療後の高次脳機能評価などに対して、神経心理検査は画像検査と同じように重要と思われる。しかしながら日本の医療現場では、神経心理検査を専門に実施する人材の確保は難しく、この分野での医学的な施策が立ち遅れているように思われる。公認心理師の国家資格制度が2018年より実施されることにより、今後、医療現場を含めた社会福祉全般での改善が図られることを期待したい。
 認知症にかかわる標準的な神経心理検査を表にまとめた。それぞれ著作権が関係していることがあり、使用には許可が必要な場合がある。
特に診療目的で使用し診療請求する場合は、ライセンス料が必要となるので注意されたい。検査用紙などを購入して使う必要があり、これは日本で普及しているHDS-RやMMSE-Jにも適応されるので注意が必要である。一方、ACE-III、ND test、FABなどは今のところライセンス料は必要とされていない。検査によっては、検査後の集計に時間のかかるものもある。検査の目的と検査にかかる時間を考慮して心理検査のバッテリーを組む必要がある。

病歴で明らかに認知症が疑われる場合は、MMSEなどの簡易認知機能検査で十分であり、神経兆候や画像検査で病型を決めることになる。進行している認知症の患者に詳しい記憶力の検査を促すことは、患者の気持ちを傷つけることがあるので注意が必要。参考までに、認知症の診療に関係しそうな心理検査を下表にまとめた。


分類


検査名


略称


保険*


時間


DL

 
 
複合検査
 
 ミニメンタルテスト
 
    容易
 
 10分
 
 
複合検査
 
 改訂長谷川式認知症スケール
 
    容易
 
 10分
 
 
複合検査
 
 日本語版MoCA (Montreal Cognitive Assessment)
 
    容易
 
 15分
 
 
複合検査
 
 Addenbrook’s Cognitive Examination-Ⅲ
 
     
-
 
 15〜20分
 
 
複合検査
 
 N式老年者用認知機能検査 (NM Scale)
 
     
-
 
 5〜10分
 
 
複合検査
 
 コグニスタット認知機能検査
 
    容易
 
 15〜25分
 
 
複合検査
 
 アルツハイマー病評価スケール (AD Assessment Scale-cognitive subscale)
 
   極複雑
 
 30〜60分
 
 
複合検査
 
 Quick Mild Cognitive Impairment Screen
 
    容易
 
 15〜25分
 
 
複合検査
 
 Mini-cog
 
     
-
 
 3〜5分
 
 
複合検査
 
 Severe Impairment Battery
 
    容易
 
 15〜20分
 
 
複合検査
 
 Wechsler 成人知能検査3版
 
    複雑
 
 60〜95分
 
 
知能検査
 
 レーベン色彩マトリックス検査 (Ravens Coloured Progressive Matrices)
 
    容易
 
 10〜15分
 
 
複合検査
 
 JART 知的機能簡易評価 (Japanese Adult Reading Test)
 
    容易
 
 10分
 
 
複合検査
 
 ウェクスラー記憶検査 (Wechsler Memory Scale-Revised)
 
   極複雑
 
 45〜60分
 
 
複合検査
 
 リバーミード行動記憶検査 (Riverbed Behavioral Memory Test)
 
    複雑
 
 30分
 
 
記憶検査
 
 Rey Auditory Verbal Learning Test (RAVLT)
 
     
-
 
 45〜50分
 
 
記憶検査
 
 Free and Cued Selective Reminding Test with Immediate Recall)
 
     
-
 
 30〜45分
 
 
複合検査
 
 Benton 視覚記銘検査 (Benton Visual Retention Test)
 
    複雑
 
 5分
 
 
複合検査
 
 標準言語対連合学習検査 (Standard verbal paired-associate learning test)
 
    複雑
 
 10分
 
 
複合検査
 
 三宅式記銘力検査
 
    複雑
 
 15分
 
 
複合検査
 
 コース立方体組み合わせテスt (Kohs Block Design Test)
 
    容易
 
 20〜50分
 
 
複合検査
 
 時計描画検査 (Clock Drawing Test)
 
     
-
 
 3-5分
 
 視空間認知
 
 レイ複雑図形検査 (Rey-Osterrieth Complex Figure Test)
 
    複雑
 
 10分
 
 
複合検査
 
 VPTA 標準高次視知覚検査 (Visual Perception Test for Agnosia)
 
   極複雑
 
 90分
 
 
複合検査
 
 ノイズ パレイドリア テスト (Noise Pareidolia Test)
 
   -
 
 15分
 
 
複合検査
 
 ウィスコンシンカード分類検査 (Wisconsin Card Sorting Test)
 
    複雑
 
 30分
 
 
複合検査
 
 BADS遂行機能障害症候群の行動評価 (Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome)
 
    複雑
 
 30〜40 分
 
 
複合検査
 
 Frontal Assessment Battery
 
    容易
 
 15分
 
 
前頭葉
 
 Trail Making Test
 
     
-
 
 5〜10分
 
 
前頭葉
 
 Stroop Test
 
    容易
 
 5分
 
 
複合検査
 
 標準注意検査法/標準意欲評価法 (Clinical Assessment for Attention/Spontaneity)
 
   極複雑
 
 100分
 
 
複合検査
 
 語流暢性テスト (Verbal Fluency Test)
 
    複雑
 
 5〜10 分
 
 
複合検査
 
 アイオワ・ギャンブリング課題 (Iowa Gambling Task)
 
    複雑
 
 15分
 
 
複合検査
 
 Tower of Hanoi Puzzle (ハノイの塔)
 
     
-
 
 
 
 
複合検査
 
 Tower of London-Drexel University
 
     
-
 
 
 
 
失行検査
 
 標準高次動作性検査 (Standard Performance Test of Apraxia)
 
   極複雑
 
 90分
 
 
失語検査
 
 WAB失語症検査 (Western Aphasia Battery)
 
   極複雑
 
 90分
 
 
失行検査
 
 SLTA標準失語症検査 (Standard Language Test of Aphasia)
 
   極複雑
 
 60分
 
 
失語検査
 
 SDSうつ性自己評価尺度 (Self-rating Depression Scale)
 
    容易
 
 10〜15分
 
 
うつ評価
 
 ハミルトンうつ病症状評価尺度 (Hamilton Depression Rating Scale)
 
    容易
 
 40分
 
 
失行検査
 
 老年期うつ病評価尺度 (Geriatric Depression Scale)
 
     
-
 
 5分
 
 
BPSD評価
 
 Neuropsychiatric Inventory
 
    容易
 
 5分
 
 
重症度評価
 
 Clinical Dementia Rating
 
    容易
 
 30〜45分
 
 
BPSD評価
 
 Functional Assessment Staging
 
     
-
 
 5分

主な心理検査の保険点数とおおよその検査時間

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*認知機能検査その他の心理検査(2018年現在)(容易;80点、複雑;280点、極複雑;450点)複数を同一日に行っても主たるもの1種類のみ算定する。国立精研式認知症スクリ-ニング検査の費用は、基本診療料に含まれているものであり別に算定できない(長谷川式試験は保険請求できるようになった)。

主な心理検査の保険点数とおおよその検査時間

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*認知機能検査その他の心理検査(2018年現在)(容易;80点、複雑;280点、極複雑;450点)複数を同一日に行っても主たるもの1種類のみ算定する。国立精研式認知症スクリ-ニング検査の費用は、基本診療料に含まれているものであり別に算定できない(長谷川式試験は保険請求できるようになった)。

1. MMSE (Mini-Mental State Examination)

  • MMSEJohns-Hopkins大学で開発された簡易認知機能検査である。65歳以上の症例を対象とした複数のデータベースを用いた研究では、カットオフ値を24/23にすると感度は0.85 (95%CI = 0.74-0.92)、特異度は0.82 (95%CI = 0.83-1.00)であった{26760674}MMSEの結果は学歴によって影響されることが知られており、教育年数が16年以上の場合はカットオフ値を27/26にしたほうが良いとする報告がある{18625866}HDS-RMMSEよりも記憶に重点が置かれていること、動作性の検査がないこと、カットオフ値が21/20点であることで、ADではMMSEよりも点数が低く出る傾向がある。
    MMSE
    は外来で医師や看護師が実施することが多いと思われるが、いくつか留意事項がある。設問3は具体的に相互に関係のない単語を示すこと、この項での採点は1回目の試行で配点すること(順番は問わない)、後に思い出してもらう必要があることを告げること、単語を3つとも記憶してもらう試行の回数は最大3回までで、これができない場合は設問5の記憶の再生は行わない。桜--電車、梅--自動車は既に知られていることもあるので、柳-クジャク-自転車、カエデ-ニワトリ-バス、イチョウ-スズメ-飛行機なども有効。長谷川式とのハイブリッドのときは、それそれ、植物、動物、乗り物をヒントとして使える。
    設問4の100-7は、途中で質問されても「100引く7は?」ではなく、「100から順番に7を繰り返し引いてください」と繰り返し説明するにとどめる。途中で被験者に「いくつ引くんでしたっけ?」などと聞かれてもヒントは与えない。途中で誤答になっても、次の答えが7を引いた値であれば正答とする。被験者が計算を拒否した場合にはフジノヤマ(セカイチス、カザグルマ、メンタイコ、タマゴヤキ)の逆昌をするが、その際には正しい位置にある文字数を得点とする。たとえば、マヤジフは2点、ヤマノフジは1点になる。紙を折る指示では、3回に分けるのではなく、一度にすべて遂行させる。『右手に持って、半分に折りたたんで、机の上に置く』という指示よりも、「半分に折りたたんで、左手に持って、机の上に置く』と指示した方が評価しやすい場合がある。
    設問11では、図形の角が5個ずつあり1つの角が重なっている必要がある。
    なお、歴史的なFolsteinらのMMSEは通常盤と呼ばれ、Molloyらが改良したものは標準化版(Standardized)と呼ばれている。
    Clarity AD
    ではStandardized MMSE (SMMSE)が使われており、詳細は論文に記載されている{9447431}
  • 通常盤との違いは以下の通り:
  • 1. 通常盤では引き算が優先されていたが、SMMSEではWORLDの逆読みが優先される。
  • 2. 3つの動作(Three-Stage Command)では、指示しないと利き手で紙をもつことが多いので、以下のようにしてもらう。
  • (なお、正式には、持つ-折る-置くの順であるが、片手で先にもってもらうと、2つに折るときに迷うので、著者は、2つに折ってから、非利き手で持ってもらい、机に置いてもらうよう指示している。)
    • 利き手の確認:指示を出す前に、検査員は必ず患者に「右利きですか、左利きですか?」と尋ねます。
    • 非利き手での指示:SMMSEのプロトコルでは、あえて患者の非利き手(例:右利きの人なら左手)で紙を持たせるように指示文をカスタマイズして実施します。
    • 時間制限:指示を言い終えてから、動作を完了するまでに「10秒以内」という明確な制限時間が設けられています。
  • 3. すべての課題に時間制限を設定している
    • 見当識(時間と場所)  それぞれ 10秒
    • 3つの単語の記銘   20秒
    • WORLDの逆唱、または、暗算  30秒
    • 3つの単語のリコール  10秒
    • 物品呼称  10秒
    • 文の復唱  10秒
    • 3段階の高騰命令  30秒
    • 目を閉じる  10秒
    • 文章を書く  30秒
    • 五角形  60秒
  •  

  • 2. Montreal Cognitive Assessment (MoCA)

    比較的認知機能が保たれているMCIの症例においては、MMSEの得点が飽和しており健常者との鑑別が難しいと考えられている。MoCAはMCIの診断におけるMMSEの欠点を補うべくNasreddineらによって開発された簡易認知機能検査である。彼らの報告によると{15817019}、277例(健常者90、MCI94、AD93)を対象にMoCA を実施したところ、MMSEではMCI診断の感度が18%であったのに対し、この検査では90%に達した(どちらもカットオフ値=26)。軽度のADの場合、感度は100%、特異度は87%であった。Dallas Heart Studyで実施された2653例を対象にした結果では{21917776}、平均値が23.36±3.99(学歴による1point補正の場合は23.78±3.81)と健常者のカットオフ値は実際にはもう少し低いことが示唆された。MoCAは2017年にversion 8.3リリースされており、オリジナルから動物の図や復唱の文章などの変更が加えられている。公式サイト(https://mocacognition.com)から、アカウントを作成しダウンロードして使うことができる。

    MoCA検査にあたり、以下のことに留意する必要がある。
    (説明のためにMoCAの例を右に示していますが、これは公式のものではないため、
    このままでは使えません

    1.
    Alternating Trail Making test
    教示: 数字と文字を交互に順番通りに線で結んで下さい。ここから始めて 1を指す)からを示し、ここで終って下さい を指す)。
    採点: 線が交差することなく、 “1-あ-2-い-3-う-4-え-5-おの順に結ぶことができたら1点を与える。直後の自己修正以外のエラーがある場合には 0 点となる。
     
    2. 視空間認知機能 Visuoconstructional skills
    教示: これ ベッドを指す)を出来るだけ正確に、下のスペースに書き写して下さい。
    採点: 正確に描くことができていたら 1 点を与える。 次の条件を1つでも満たしていない場合には0 点となる。
    •  3 次元として描かれている
    • 
    全ての線が描かれている
    • 
    すべての線が接触していて隙間がなく、あってもわずかである
    • 
    余計な線が加えられていない
    • 
    線の並行関係が保たれており、 それら長さが類似している
    • 
    ベッドとしての線の方向と間隔が維持されている

    Stacks Image 10245
    Stacks Image 10242

    3. 視空間認知機能(時計描画) Visuoconstructional skills (clock)
    被験者が課題遂行中に自分の腕時計を見ないこと、および視界に時計がないことを確認しなければならない。検査者は適切な場所を指定し、以下の指示を与える。
    「ここに時計を描いてください。すべての数字を入れ、時刻を1110分にしてください。」

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    Stacks Image 10233

    比較的認知機能が保たれているMCIの症例においては、MMSEの得点が飽和しており健常者との鑑別が難しいと考えられている。MoCAはMCIの診断におけるMMSEの欠点を補うべくNasreddineらによって開発された簡易認知機能検査である。彼らの報告によると{15817019}、277例(健常者90、MCI94、AD93)を対象にMoCA を実施したところ、MMSEではMCI診断の感度が18%であったのに対し、この検査では90%に達した(どちらもカットオフ値=26)。軽度のADの場合、感度は100%、特異度は87%であった。Dallas Heart Studyで実施された2653例を対象にした結果では{21917776}、平均値が23.36±3.99(学歴による1point補正の場合は23.78±3.81)と健常者のカットオフ値は実際にはもう少し低いことが示唆された。MoCAは2017年にversion 8.3リリースされており、オリジナルから動物の図や復唱の文章などの変更が加えられている。公式サイト(https://mocacognition.com)から、アカウントを作成しダウンロードして使うことができる。

    MoCA検査にあたり、以下のことに留意する必要がある。
    (説明のためにMoCAの例を右に示していますが、これは公式のものではないため、
    このままでは使えません

    1.
    Alternating Trail Making test
    教示: 数字と文字を交互に順番通りに線で結んで下さい。ここから始めて 1を指す)からを示し、ここで終って下さい を指す)。
    採点: 線が交差することなく、 “1-あ-2-い-3-う-4-え-5-おの順に結ぶことができたら1点を与える。直後の自己修正以外のエラーがある場合には 0 点となる。
     
    2. 視空間認知機能 Visuoconstructional skills
    教示: これ ベッドを指す)を出来るだけ正確に、下のスペースに書き写して下さい。
    採点: 正確に描くことができていたら 1 点を与える。 次の条件を1つでも満たしていない場合には0 点となる。
    •  3 次元として描かれている
    • 
    全ての線が描かれている
    • 
    すべての線が接触していて隙間がなく、あってもわずかである
    • 
    余計な線が加えられていない
    • 
    線の並行関係が保たれており、 それら長さが類似している
    • 
    ベッドとしての線の方向と間隔が維持されている

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    Stacks Image 10222

    3. 視空間認知機能(時計描画) Visuoconstructional skills (clock)
    被験者が課題遂行中に自分の腕時計を見ないこと、および視界に時計がないことを確認しなければならない。検査者は適切な場所を指定し、以下の指示を与える。
    「ここに時計を描いてください。すべての数字を入れ、時刻を1110分にしてください。」

    Stacks Image 10211
    Stacks Image 10213

    ほかの日本語訳では、「ここに時計を描いてください。 文字盤に数字を全て描き、 1110分を指すよう針を描いて下さい。」とあるが、原文には「文字盤」はないこと、また、「文字盤」をすでにある四角の枠のことだと考えてしまうことから、「文字盤」は言わない方が良いと思われる。
    MoCA
    の試験紙は採点票も兼ねているように思える。ここで問題となるのは、時計描画の枠の下に採点のための、輪郭、数字、針という文字で、この採点用紙に直接描画させるときには、これが検査のバイアスになる可能性がある。厳密には、隠した方が良いと思われるが、これに関する公式なインストラクションは今のところない。

    採点: 次の 3 つの基準で採点を行い、それぞれに対して 1 点を与える。
    •  輪郭(1 点):時計の輪郭が描かれていること(円形または四角形)。わずかな歪みであれば問題ない。(例えば、円を閉じるところが僅かに不完全でも問題ない)
    • 
    数字(1 点):数字が過不足無く描かれていること。正しい順番であり、かつ正しい位置に描かれていること。数字がローマ数字であっても問題はない。数字は円の輪郭の外側に配置されていてもよい。内側と外側に配置されている場合、得点は付与しない。
    •   1 点):長針、短針ともに正しい数字を指していること。短針は長針よりもはっきりと短くなくてはならない。2 つの針が文字盤の中心でつながっていること。針の交点は文字盤の中心に近い位置にあること。それぞれの基準において、条件が満たされていない場合には 0 点となる。

    4. 名称 (Naming)
    教示: この動物の名前を教えてください (左から順に指していく)。
    採点: 動物の名前を正しく言えればそれぞれに対して 1 点を与える。
    1 ライオン、(2)サイ、(3)ラクダ

    Stacks Image 10122
    Stacks Image 10124
    Stacks Image 10136


    5. 記憶 (memory)
    教示: これは記憶テストです。これから単語のリストを読み上げます。これらを覚えておく必要があります。よく聞いてください。私が読み終えたら、覚えている単語をできるだけ多く教えてください。言う順番は問いません。 1 秒につき1つのペースで単語を読み上げる。
    対象者が再生した単語について1試行の欄にチェックを入れる。
    被験者が終了した(すべての単語を想起した)か、これ以上単語を思い出せないことを示したら、次の指示とともにリストを2回目に読み上げる。(1回目で5つの単語をすべて思い出せた(正解した)場合であっても、例外なく必ず2回目を実施する。)
    同じリストをもう一度読み上げます。覚えておいて、できるだけ多くの単語を言ってください。
    被験者が2回目の試行後に思い出した単語ごとに、指定された欄にチェックマークを付ける。
    2
    回目の試行の終了時に、被験者に対し、これらの単語を再度思い出してもらうよう、テストの最後に、「それらの単語をもう一度後で思い出してもらいます」と伝える。
    採点: 1 試行、第 2 試行とも得点は与えない。
     
    6. 注意 (attention)
    (1)
    順方向数唱
    教示: これからいくつかの数字を読み上げます。私が読み終えましたら、私と同じように繰り返して言って下さい。 5つの数字を1秒につき1つのペースで読み上げる)
    (2)
    逆方向数唱
    教示: それでは、またいくつか数字を読み上げます。今度は私が読んだ順番と逆から繰り返して言って下さい。 3つの数字を1秒につき1つのペースで読み上げる)
    採点: 正しく繰り返すことができたらそれぞれ1点を与える。(逆唱では 2-4-7 が正答)
    (3)
    ビジランス (vigilance)
    教示: これから、ひらがなを読み上げますので、私がと言うたびに手を叩いて下さい。私が以外の ひらがなを言う時には、手は叩かないで下さい。 (検査用紙に書かれたひらがなを1秒につき1つのペースで読み上げる)
    マヒなどで両手を使う事が困難な場合には、手を叩く代わりに片手で机などを叩くよう求める。
    採点: エラーが1回以下の時に1点を与える。(エラー:の時に手を叩かない、もしくは他のひらがなの時に手を叩く)
    (4)
    暗算 (serial s)
    教示: 私が止めというまで、60から7を順に引いていって下さい。 (必要であればこの教示を 2 回与える)
    この課題の遂行にあたって、指や鉛筆、紙を使用してはならない。
    採点: 3 点満点で採点を行う。正答がない時には0点、正答が1つの時には1点、正答が2~3つの時には2点、正答が45つの時には3点を与える。 60から7を減算していく際の、それぞれの計算において正誤を判断する。例えば、1回目の計算が間違っていても、2回目の計算において正しく7が引かれていれば、2回目の計算は正答とする。
     
    7. 復唱 (sentence repetition)
    教示: これから文章を読み上げます 。私が読んだ後に、正確に繰り返して下さい。(間をとる)
    「真夜中に子供が公園で犬を散歩させていました」(対象者が復唱した後に次ぎの教示を与える)
    それでは、もうひとつ文章を読み上げます。先ほどと同じように正確に繰り返して下さい。(間をとる)
    「画家は展覧会のための絵を描き終えました」
    採点: それぞれの文章を正しく復唱できていれば 1 点を与える。復唱は正確でなければならない。
    (言葉を省略するなどの細かいエラーにも注意を払う)
     
    8. 語想起 (verbal fluency)
    教示: これから私が言うひらがなで始まる言葉を、出来るだけたくさん言って下さい。言葉であれば何でも構いません。時間は1分間です。準備はよろしいですか?(間をとる)
    それでは、で始まる言葉を出来るだけたくさん言って下さい。(60秒計測)止め。
    採点: 言葉を11個以上生成出来れば1点を与える。対象者の生成した語は下部もしくは側部の余白に記録し、生成した総数についてもカウントしておく。
     
    9. 抽象化 (abstraction)
    教示: 実施方法:検査担当者は、被験者に各単語ペアの共通点を説明するよう求めます。まず、次のような例から始めます:
    (
    練習)2つの単語を挙げますので、それらがどのカテゴリーに属するかを教えてください」(間をとる)
    「オレンジとバナナ」。
    被験者が正しく答えた場合、検査担当者は次のように応答します:「はい、どちらも 『くだもの』 というカテゴリーに属しています」と答えます。
    被験者が具体的な共通部分を回答した場合、試験官はさらに1つのヒントを与えます:「これらに属する別のカテゴリーを教えてください。」
    被験者が適切な回答(くだもの)を出さない場合、試験官は「そうです。そして、どちらも『くだもの』というカテゴリーに属しています。」と言う。これ以上の指示や説明は行わない。
    練習試行の後、試験官は次のように言います:「では始めます」
    「電車と自転車」    ○ 乗り物、交通手段、移動手段、旅行につかう  × 車輪がある
    被験者の回答に続き、試験官は次のように言って2回目の試行を行います:
    「定規と腕時計」    ○ 測定器具、測定に使用する  × 数字がある
     
    例示の間にヒントが使用されなかった場合、ヒント(抽象化セクション全体に対して1つ)を与えることができます。
    採点:正しく回答したペアごとに1点が与えられる
     
    10. 遅延再生 (delayed recall)
    教示: 先ほどいくつかの単語を憶え 頂きました。今憶えている単語をできるだけ思い出してください。 (手がかりのない状態で憶えていたものとして自由再生の欄にチェックを入れる)
    採点: 手がかりなく再生できた単語それぞれに1点を与える。
    参考項目: 遅延自由再生に続き、再生できなかった単語について意味的な手がかり(カテゴリ)を与える。手がかり(カテゴリ)によって再生できた場合には、手がかり(カテゴリ)の欄にチェックを入れる。手がかり(カテゴリ)を与えても再生できない時には、多肢選択試行として次のような教示を与える。次の単語のうちどれだと思いますか?多肢選択によって再生できた場合には手がかり(多肢選択)の欄にチェックを入れる。
    顔: 手がかり(カテゴリ): 身体の一部            選択: 口、顔、手
    絹: 手がかり(カテゴリ): 生地                       選択: 絹、麻、木綿
    神社: 手がかり(カテゴリ): 建物                    選択: 神社、学校、病院
    百合: 手がかり(カテゴリ):                       選択: バラ、百合、椿
    赤: 手がかり(カテゴリ):                           選択: 赤、青、緑
    採点: 手がかりを与えた単語については得点としない。 手がかり再生による得点は、記憶障害のタイプについての追加的情報としてのみ使用する。記憶障害が検索の失敗に起因しているならば、手がかりによって再生成績は改善される。記憶障害が符号化の失敗に起因しているのであれば、手がかりによる再生成績の改善はみられない。


    11. 見当識 (orientation)
    教示: 今日の日付を教えてください。 (対象者の回答が完全でない場合には次の教示を与える)
    今日は何年、何月、何日、何曜日ですか? (回答後に次の教示を続ける)
    それでは、ここは何市(区・町)ですか? (回答後に次の教示を続ける)
    それでは、この場所(建物)の名前は何ですか?
    採点: 正しく回答できた項目それぞれに1点を与える。日付や名前については正確な回答でなくてはならない。
    曜日や日を1日間違えた場合、点は付与されない。
    合計得点: 検査用紙の右側に記入した得点を全て合計する。教育年数が12年以下の場合には1点を加える(最高 30点)。合計得点が26点以上であれば健常範囲と考えられる。



    Memory index score (MIS)
    軽度認知障害(MCI)患者において、モントリオール認知機能評価(MoCA)の総得点(MoCA-TS)および記憶指数(MoCA-MIS)が、アルツハイマー病(AD)への移行を予測する上で有用であるかどうかを評価した。結果、114名の参加者がADへ進行(MCI-AD)し、51名は進行しなかった (非進行群;MCI-NC)。ベースライン時点でMoCA-TS20/30未満かつMoCA-MIS7/15未満であったMCI参加者の90.5%が、平均18か月の追跡期間内にADへ進行した。一方両スコアともこのカットオフ値を上回っていたMCI参加者の52.7%がADに進行した。多領域性記憶障害型MCIの患者では、ADへの移行率が最も高かった(73.9%{24635004}

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    Memory index score (MIS)
    軽度認知障害(MCI)患者において、モントリオール認知機能評価(MoCA)の総得点(MoCA-TS)および記憶指数(MoCA-MIS)が、アルツハイマー病(AD)への移行を予測する上で有用であるかどうかを評価した。結果、114名の参加者がADへ進行(MCI-AD)し、51名は進行しなかった (非進行群;MCI-NC)。ベースライン時点でMoCA-TS20/30未満かつMoCA-MIS7/15未満であったMCI参加者の90.5%が、平均18か月の追跡期間内にADへ進行した。一方両スコアともこのカットオフ値を上回っていたMCI参加者の52.7%がADに進行した。多領域性記憶障害型MCIの患者では、ADへの移行率が最も高かった(73.9%{24635004}

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    アイルランドのコーク大学が実施した健常者174(SMC73含む)、MCI103(aMCI=81、nonaMCI=62)、認知症274を対象にした研究では{26890758}、健常者とそれ以外(MCI+認知症)の判別のカットオフ値を26、24、23、22とした時の感度/特異度(%)は、それぞれ96/58、89/83、85/86、78/91であった。なおこの報告では、MoCAよりもQuick Mild Cognitive Impairement screen (Qmci)が感度、特異度とも優れていた(カットオフ値=62、90/87)。
    ADNIを用いた618例(健常者219、MCI299、AD100)の検討では
    {26346644}、MoCAのカットオフ値を17に設定すると96.3%のMCIの症例が含まれることになり、これはMMSEのカットオフ値を24にした時にMCIが98.3%含まれるのに相当した。また、MoCAのカットオフ値を20に設定するとMCIとADの鑑別の感度と特異度はそれぞれ81.9%と88.0%であった。しかしながら健常者とMCIにおいては、MoCAの得点数がそれぞれ25.57±2.75と23.41±3.38でそれほど大きな差はなく、この検査だけで両者を鑑別することは困難と考えられる。他にもMoCAによるMCIと健常者の鑑別には限界があるとする報告が出ている{21156989}

    ⑨の復唱課題であるが、古いバージョンのMoCA-Jでは「太郎が今日手伝うことしか知りません」となっているが、英文では”I only know that John is the one to help today”(私が唯一知っていることは、今日の手伝いは太郎だ、ということです)となっている。2つ目は「犬が部屋にいるときは、猫はいつもイスの下にかくれていました」となっているが、原文では”The cat always hid under the couch when dogs were in the room”(犬たちが部屋にいるときは、猫はいつもソファの下に隠れていた)となっている。原文では、onlyやalwaysが正しく言えているか、過去形、複数形になっているかなどもチェックするようになっているが、日本語の環境では多少状況が異なると思われる。また、著者の経験ではイスの下と翻訳すると、机の下と間違える被験者にしばしば遭遇する。
    ⑫の遅延再生で自由再生できない場合にはヒントを与えるが、この場合は得点にしない。しかしながら、認知機能がより低下している対象者を評価する際には有用になってくる可能性があるので、MIS スコアとして利用されることがある。なおヒントは第一段階(カテゴリー)、第二段階(選択)の順になる。顔:体の一部、鼻-顔-手。絹:生地の種類、ウール(羊毛)-綿-絹。神社(教会):建物、神社-学校-病院。ゆり(菊):花の名前、ばら-ゆり-チューリップ。赤:色、赤-青-緑。
    ⑬の見当識は、他の検査と異なり1日でも違う場合は得点としない。
    MoCAは色々な国で翻訳されて使われているが、報告者によってカットオフ値にばらつきが多く
    {26513331}、今後の研究成果に期待したい。

    3. Addenbrooke’s Cognitive Examination – III (ACE-III)

    ACEはケンブリッジ大学のMRC (Medical Research Council) Cognition and Brain Sciences Unitで開発された50歳以上の認知症が疑われる症例を対象とした簡易認知機能検査で、ACE-revised (ACE-R)に続きACE-IIIが公表されている。本検査の著作権はJohn Hodge教授に帰属するが、許可なく自由に使うことができる。検査に要する時間は15-20分程度である。ACEは5つの下位検査(注意/見当識;18、記憶;26、語想起;14、言語;26、視空間;16)で構成され、総得点が100点となっている。ACE-Rによる認知症検出の感度と特異度は、カットオフ値88で94%/89%、カットオフ値82で84%/100%でありMMSEよりも優れた成績が報告されている{16977673}ACE-RではMMSEと共通する検査項目が含まれていたが、ACE-IIIでは「目を閉じなさい」「紙を右手で取って半分に折りたたみ床に置く」の言語理解の項目は他のものに置き替え、MMSEの著作権に配慮した改良が加えられている。また5文字の逆唱問題の削除、ペンと腕時計の図がスプーンと本の図に変更された。この結果、カットオフ値88で感度と特異度が100%/96%、カットオフ値82で93%/100%となっている{26187808}。しかしながら、カットオフ値81で感度と特異度が79%/96%という報告{26227172}やカットオフ値が76.5で81%/85%という報告がある {25603424}

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    53名の健常者(平均年齢:68.7±7.0、平均学歴:14.1±2.8年)
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    53名の健常者(平均年齢:68.7±7.0、平均学歴:14.1±2.8年)
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    スペインからの報告では 、200例(健常者25、自覚的健忘症48、aMCI47、AD47、その他の認知症33)で検討した結果、健常者(+自覚的健忘症)とaMCIの鑑別のカットオフポイントを74/73にした時の感度と特異度はそれぞれ76.6%と75.0%であった{27682860} 。下位検査の記憶(memory domain)だけでみると、カットオフポイント16/15で感度と特異度はそれぞれ87.2%と80.0%であった。同様に健常者とADではカットオフポイント64/63で95.7%と89.7%であった。記憶(memory domain)ではカットオフポイント14/13で93.6%と94.9%であった。興味深いことに、ACEは後述のFCSRTと高い相関(r = 0.806)を示している。

    疾患ごとのACE-Ⅲの成績
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    疾患ごとのその他検査での成績
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    Corsi; Corsi block-tapping test、SDMT; Symbol Digit Modalities Test、VOSP; Visual Object and Space Perception Battery、JLO; Judgement of Line Orientation、ToL; Tower of London-Drexel University、FCSRY; Free and Cued Selective Reminding Test、ROCF; Rey-Osterrieth Complex Figure Test (copy & memory)
    4. N式老年者用精神状態尺度 (NMスケール)

    意思疎通が困難な対象者であっても状態を観察することによって評価することができる。

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    5. Cognistat (Cognistat Assessment System; CAS)

     Cognistatはスタンフォード大学で開発されたもので、3領域の一般因子(覚醒水準、見当識、注意)と、5領域の認知機能(言語、構成、記憶、計算、論理)の8領域を11の下位検査で評価し、かつ下位検査ごとに標準点への換算を可能にしている。このためWAISと同様に評価結果をプロフィールとして提示できるので理解しやすい。はじめにスクリーン検査を行い、これに正答すれば正常、パスできなかった場合は段階的に簡単にしたメトリック検査を実施する。2009年にCognistat Assessment System (CAS)が開発され、オンラインで検査できるようになっている。Cognistatには5分でできるスクリーニング用のCognistat five、2017年に発表されたCAS-II がある。Fiveは、1)4つの単語の即時記憶、2)名前、場所、時間を聞くオリエンテーション、3)タイルを使って指示された3種類の図形を作のにかかる時間、4)はじめに記憶した4つの単語の遅延再生から構成されている。

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     Cognistatはスタンフォード大学で開発されたもので、3領域の一般因子(覚醒水準、見当識、注意)と、5領域の認知機能(言語、構成、記憶、計算、論理)の8領域を11の下位検査で評価し、かつ下位検査ごとに標準点への換算を可能にしている。このためWAISと同様に評価結果をプロフィールとして提示できるので理解しやすい。はじめにスクリーン検査を行い、これに正答すれば正常、パスできなかった場合は段階的に簡単にしたメトリック検査を実施する。2009年にCognistat Assessment System (CAS)が開発され、オンラインで検査できるようになっている。Cognistatには5分でできるスクリーニング用のCognistat five、2017年に発表されたCAS-II がある。Fiveは、1)4つの単語の即時記憶、2)名前、場所、時間を聞くオリエンテーション、3)タイルを使って指示された3種類の図形を作のにかかる時間、4)はじめに記憶した4つの単語の遅延再生から構成されている。

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    2017年に第2版(CAS-II)では従来と同じ8領域のもの(basic battery)と12領域のもの(standard battery)があり、検査時間はそれぞれ40分と60分。
    6. ADAS-cog (Alzheimer’s Disease Assessment Scale-cognitive subscale)

     ADASはMount Sinai Center for Cognitive Health (CCH)のMohsらによって開発された記憶力を中心とした認知機能検査で、ADと診断された症例に対して治療効果を調べるなど経過を観察するために開発された。自由会話からの評価項目があるため、検査者にはトレーニングが必要になる。日本語版(ADAS-Jcog)は本間らによって作成されている(本間ら、老年精神医学雑誌, 1992){医中誌1993042595}。 タッチパネル式のADAS-Jcog支援システムであるDT-Naviをエーザイが開発して有償で供給している。ADASには下位尺度として認知機能(cognitive)と非認知機能(non-cognitive)があり、認知機能を調べる場合にADAS-cogを用いる。表のようにADAS-cog は11項目から構成されており、配点は0〜70で点数が大きいほど認知機能の低下を示している。ADの症例の自然経過では年間9〜11点上昇すると報告されている{医中誌1993042595}経過観察のため繰り返して検査されるが、この検査に並行シリーズはない。しかしながら、ADに対する治療効果の臨床試験の多くは、4週ごとに評価を実施しても問題ないとされている。

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    FASTによる重症度とADAS-J cogにおける本間らの報告{医中誌1993042595}を表に示す。健常者の平均は5点前後で、15点以上の場合には認知症が疑われる。MCIでは10点前後になると思われる。
     ADAS-cogには視空間機能、判断力や抽象思考能力、注意力を評価する課題が含まれていないため、ADAS-non-cogの集中力を加えたもの、Behavior Formとして迷路問題と2つの数字の消去問題の2項目が追加された13項目で評価するものがある。

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    FASTによる重症度とADAS-J cogにおける本間らの報告{医中誌1993042595}を表に示す。健常者の平均は5点前後で、15点以上の場合には認知症が疑われる。MCIでは10点前後になると思われる。
     ADAS-cogには視空間機能、判断力や抽象思考能力、注意力を評価する課題が含まれていないため、ADAS-non-cogの集中力を加えたもの、Behavior Formとして迷路問題と2つの数字の消去問題の2項目が追加された13項目で評価するものがある。

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    ADAS-cog の実施方法

    ① 単語再生:カードに記載されている単語10個を記憶してもらう。単語:ボトル(瓶)、ポテト、娘、教会、星、動物、森、湖、時計、オフィス(事務所)。評価は3回の試行で思い出せなかった単語の平均数。
    5から10分間の自由形式の会話を行い、課題2〜4を評価(録音)

    ② 口語言語能力:言葉の明瞭さ、他人にわかるように話せているかなど、被験者の発話のみによって評価する。
    問題なし=0、ごく軽度=1、軽度=2(25%以下)、中等度=3(25から50%)、やや高度=4(50%以上)、高度=5(無言)。

    ③ 言語の聴覚的理解:話した内容をどのていど理解しているか(5の口頭命令は対象としない)
    問題なし=0、ごく軽度=1、軽度=2、中等度=3(数回の繰り返しや言い替えが必要)、やや高度=4(時に正しい反応あり)、高度=5(理解できていない)。
    ④ 自発話における喚語困難:被験者が自発的に話している内容で、換語(語の想起)の問題を評価する(6の手指および物品呼称は対象としない)
    問題なし=0、ごく軽度=1(1〜2語)、軽度=2(迂遠な表現、同義語の置き換えが顕著)、中等度=3(時に換語困難、置き換えなし)、やや高度=4(頻回に換語困難、置き換えなし)、高度=5(発話があっても1〜2語。話しの内容が空虚)。

    ⑤ 口頭命令:1)手を握ってください。2)天井を指さして、次に床を指してください。3)ペンを紙の上に置いて、その後に元の位置に戻して下さい。4)時計をペンと反対側に置いて、紙をひっくり返してください。5)目をつむって2本の指で左右の肩をそれぞれ2回叩いてください。評価はできなかった動作の数。

    ⑥ 手指および物品呼称:無作為に選択された12個の物品の呼称(花、ガラガラ、財布、ベッド、マスク、ハーモニカ、笛、ハサミ、聴診器、ペン、くし、トング、親指、人差し指、薬指、小指、中指)。利き手の指の呼称。呼称できなかった場合、「花→庭で育つもの、ベッド→眠る時に使うもの」などのヒントを述べてもよい。配点は、出来なかった単語(総数17個)の数。0〜2=0、3〜5=1、6〜8=2、9〜11=3、12〜14=4、15〜17=5。

    ⑦ 構成行為:4つの図形を模写してもらう。2回の試行まで許可。採点は、4つ正解のときは0。3つ正解のときは1。4つとも不正解のときは4。図が書けない、図の替わりに文字をかく、描いて意味のないときは5。

    ⑧ 観念行為:封筒、便箋、ペンを用意する。「これから自分自身に手紙を書いて郵送するふりをしてもらいます」1)この紙を折りたたんで、2)封筒に入れて、3)封筒を閉じて(シールして)、4)自分宛に宛先を書いて、5)切手を貼る場所に印(×)を入れてください。記憶の検査ではないので、5つの作業それぞれについて、再度口頭で指示を出してもよい。評価はできなかった動作の数。

    ⑨ 見当識:本人の姓名(full name)、曜日、月、日付、年、季節、場所、今の時間の8項目。時計やカレンダーの使用は禁止。1日、1時間以内の誤差は正解とする。

    ⑩ 単語再認:単語が1語ずつ記載された12枚のカードを提示して声を出して読んで記憶してもらう。その後24枚のカードを見せて、以前に見せた単語であるかどうかを尋ねる。これが3セット用意されており、3回試行する。得点は3回の平均誤数。

    ⑪ テスト教示の再生能力:10の初回施行時に被験者がテスト教示を記憶しているかどうかを評価する。
    問題なし=0、ごく軽度=1(1度だけ忘れてしまった)、軽度=2(2回思い出させる必要があった)、中等度=3(3〜4回思い出させる必要があった)、やや高度=4(5〜6回思い出させる必要があった)、高度=5(7回以上思い出させる必要があった)。

    ⑫ 迷路試験:間違いの回数と遂行時間

    ⑬ 数字消去:正答数(0-40)、誤り数、遂行時間

    7. Quick Mild Cognitive Impairment screen (Qmci)
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    AB Cognitive Screen 135 (ABCS135)に論理記憶(物語の再生)を加えるなどの修正をして言語記憶により重点を置き、年齢や教育暦の影響を受けにくする工夫がされている。6つの下位検査で構成され、100点満点、5分で検査できるようになっている。44歳から92歳(平均67歳)の965例(健常者630、MCI154、認知症181)を対象にした研究では{22610464}、健常者、MCI、認知症それぞれの平均値とinter-quartile range (IQR)が76(IQR=14)、62(IQR=15)、36(IQR=22)とMMSEの29(IQR=2)、28(IQR=2)、22(IQR=7)よりも優れた成績を示した。健常者とMCIの鑑別においてMoCAとの比較では、QmciのAUCが0.90に対しMoCAは0.80でQmci の方が優れていた。同様に健常者と認知症においてもQmci (0.94)の方がMoCA(0.90)よりも優れていた{26890758}Qmciは健常者とそれ以外(MCI+認知症)との鑑別にカットオフ値62で感度90%、特異度87%であった。これに対してMoCAはカットオフ値26で感度96%、特異度58%であった。

    論理記憶の別バージョン
    茶色ウサギ追いかけてっています。
    10月したリンゴ木々なって(実って)いました。

    雌鶏(めんどり)がネコ後についてコンクリート道路渡っています。
    かい9月午後枯れかけ*吹かれています。
    英語ではdry leaves(枯葉)になっていますが、採点は「枯れている」と「葉」を別々に評価するため、訳では「枯れかけた」にしています。したがって「枯れた」でもOK。

    オリジナルの英文
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    論理記憶の別バージョン
    茶色ウサギ追いかけてっています。
    10月したリンゴ木々なって(実って)いました。

    雌鶏(めんどり)がネコ後についてコンクリート道路渡っています。
    かい9月午後枯れかけ*吹かれています。
    英語ではdry leaves(枯葉)になっていますが、採点は「枯れている」と「葉」を別々に評価するため、訳では「枯れかけた」にしています。したがって「枯れた」でもOK。

    オリジナルの英文
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    8. Mini-Cog

    評価法は以下の2通りになる。

    • All-or-nothing (正確数): 再生が完全に一致すれば得点(最高10点)

    • Number of error score (誤謬数): 省略・追加、ゆがみ、保続、回転、置き違い、サイズ違いで評価する。保続とは、当該図よりも前に提示された図形の再生が混入していることを指す。サイズ違いとは、同一図版内の複数の図形間の相対的サイズの違いを指す。

    日本人の成績はBentonの米国人の報告よりも成績が良く、正確数、誤謬数とも年齢の影響もあまり受けない。20-45歳の範囲では、正確数は8-9、誤謬数は1-2程度。50歳以上になると、成績はこれより悪くなる。また、誤謬数の評価ではばらつきが大きくなる。滝浦の研究によると、日本人20代の成人の正確数は9前後、誤謬数は1前後と報告されている。20〜50歳ではそれぞれ8〜9、1〜2程度であった。70歳を超えると成績は悪くなる傾向があり、七田らの報告によると{3700989}、70歳時の正確数は5.8±1.8(男性6.1±1.7、女性5.4±1.8)であったのが、5年後の75歳時には5.4±1.9と低下していた。

    3項目からなる簡易な検査で検査の負担が少ない。
    3つの単語を述べて、復唱して記憶してもらう。
    円の描いてある紙を用意し、これに時計を描いてもらい、11時10分になるように針を入れてもらう。
    3つの単語を思い出してもらう。

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    65歳以上の被験者2000名以上を対象にした報告{28006822}によると、認知症と健常者の鑑別の感度、特異度は0.88、0.85でMMSEの0.93、0.81と成績に大差はなかった。

    9. Severe Impairment Battery (SIB)

     SIBはSaxtonらによって開発された重症のADを対象とした認知機能検査で40項目51個の簡単な質問を患者にすることによって合計が100点になるようになっており、症状が軽いほど得点は高くなる。挨拶などのコミュニケーションの能力(社会的相互行為)、記憶力、見当識、注意、カップを使えるかなどの失行の有無(実行)、視空間能力、言語、円を描くなどの構成能力、患者の名前を呼んだときの反応などをチェックする。SIB日本語版を用いた新名らの報告を表に示す{医中誌2005214615}。Saxtonらは、SIBを短縮したSIB-S(51個を26個に短縮)を新たに発表した{16286444}。これにより従来のSIBでは検査時間が30分程度であったものが10-15分に短縮できるとされている。

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    表:認知症重症度別の開始時および24週後調査におけるSIB-J合計特典の推定周辺平均 (新名ら, 老年精神医学雑誌、2005年)
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    a 共変量 (患者性別=1.7059、患者年齢=78.4118、ドネペジル使用=0.5098、精神科治療薬使用=0.4314)の値を元に評価された。
    10. レーベン色彩マトリックス検査 (Raven’s Colored Progressive Matrices)

    Raven’s test、あるいは Raven's Progressive Matricesは、一般認知能力、抽象的推論力、および流動性知能を測定するために用いられる非言語的心理測定検査。1938年にジョン・C・レイヴンによって開発された。一部が欠けている幾何学的な図形が提示され、受験者はその背後にある論理を推論して、正しい答えを選択する。言語や文化的背景に左右されず、純粋な認知能力を測定できる点が最大の特徴。主要区分は、一般向けの「標準(SPM)」、高難度の「上級(APM)」、そして1983年に世界標準の改訂版マニュアルが整備された、幼児・高齢者向けの「色彩(RCPM)」の3種類がある。現在も、医療機関での認知症・失語症のスクリーニングなどで広く活用されている。

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    Raven’s test、あるいは Raven's Progressive Matricesは、一般認知能力、抽象的推論力、および流動性知能を測定するために用いられる非言語的心理測定検査。1938年にジョン・C・レイヴンによって開発された。一部が欠けている幾何学的な図形が提示され、受験者はその背後にある論理を推論して、正しい答えを選択する。言語や文化的背景に左右されず、純粋な認知能力を測定できる点が最大の特徴。主要区分は、一般向けの「標準(SPM)」、高難度の「上級(APM)」、そして1983年に世界標準の改訂版マニュアルが整備された、幼児・高齢者向けの「色彩(RCPM)」の3種類がある。現在も、医療機関での認知症・失語症のスクリーニングなどで広く活用されている。

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  • 以下の5つの主要な機能を通じて臨床スクリーニングに組み込まれている:
  • 1. 言語障害および運動障害の影響を排除する
  • 失語症および脳卒中: 言語を話したり理解したりする能力(失語症)を失った患者は、ウェクスラー成人スケールのような従来のIQ検査を受けることができない。レイヴン検査により、臨床医は患者の損なわれていない論理的思考を評価することができる。
  • 運動機能障害: この検査は、指さすか、多肢選択式の選択肢を選ぶだけで済むため、脳性麻痺や進行したパーキンソン病など、重度の運動機能制限がある個人にとって理想的である。
  • 2. 実行機能障害の評価
  • レイヴン検査の後半のセクションでは、複数のルールを同時に頭の中に保持する必要があるため、前頭葉に損傷のある患者では成績が急激に低下する。臨床医は、この検査を用いて以下の機能障害を観察する:
  • 作業記憶: 複雑な視覚パターンを頭の中で操作する能力。
  • 認知的柔軟性: 以前のパターンが通用しなくなった際に、新しい論理的ルールに切り替える能力。
  • 計画性と抽象的推論: 衝動的に推測するのではなく、体系的な規則を導き出すこと。
  • 3. 認知症および認知機能低下の検出
  • 初期段階のスクリーニング: 流動性知能は神経変性に対して非常に高い感度を示す。同年齢層と比較して患者のレイヴン検査のパーセンタイル順位が急激に低下した場合、それはアルツハイマー病や血管性認知症の早期警告サインとなり得る。
  • カラー版(CPM): 臨床医は、高齢者や重度の障害を持つ患者に対して、レイヴン・カラー・プログレッシブ・マトリックス(CPM)を頻繁に利用している。鮮やかで単色の配色は視覚的な認知負荷を軽減し、臨床医が残存する推論能力を正確に測定することを可能にする。[, 2]
  • 4. 「発症前」の能力の推定
  • 患者が外傷性脳損傷(TBI)を負った場合、臨床医は事故前のベースライン知能を把握する必要がある。
  • レイヴン検査は、結晶性知能(語彙力テストなど)の検査と併用され、外傷によってどの程度の抽象的かつ新規な問題解決能力が失われたかを正確に特定するために用いられる。
  • 5. 仮病(詐病)の特定
  • 課題は難易度が上がる順に厳密に配列されているため、内部一貫性を備えている。
  • 患者が最初の方で最も簡単な視覚マトリックス問題を解けず、一方で後半の複雑なマトリックス問題を正しく解答した場合、実施者は、努力の不一致や認知障害の意図的な偽装を検知することができる。
  • Advanced Progressive Matrices の例 (Spatial versus object visualizers: A new characterization of visual cognitive style より)

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    レーベン色彩マトリックス検査は1983年に改訂された。課題は1箇所が欠けた幾何学図版に対して、当てはまる図柄を6つの中から選択させる。図版は、Aが12問、Abが12問。Bが12問の合計36問で構成されており、はじめは単なる模様合わせであるが、検査が進むに連れて類推による穴埋めが必要になる。サンプル画像を作成したので、チャレンジしてみてください。

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    Advanced Progressive Matrices の例 (Spatial versus object visualizers: A new characterization of visual cognitive style より)

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    レーベン色彩マトリックス検査は1983年に改訂された。課題は1箇所が欠けた幾何学図版に対して、当てはまる図柄を6つの中から選択させる。図版は、Aが12問、Abが12問。Bが12問の合計36問で構成されており、はじめは単なる模様合わせであるが、検査が進むに連れて類推による穴埋めが必要になる。サンプル画像を作成したので、チャレンジしてみてください。

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    55歳から85歳のオランダの成人を対象とした大規模な調査の結果を示す(Smit CH, et al. J Clin Psycho, 1997)。{9356898}
    Raven’s colored progressive matrices (RCPM) short form (SF)として、検査のスコアはA+Bの24点満点とした。流動性IQは後半のセットBがよく反映すると考えられている。低学歴は0~9年、中学歴は10~15年、高学歴は16年以上に設定した。年齢と学歴は明らかにRCPMのパフォーマンスに影響した。年齢(F(5,2809) 1201.1, p .001)と教育(F(2,2812) 2062.0, p .001)はともに有意であったのに対し性別(F(1,2813) 2.2; ns)は有意でなかった。

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    55歳から85歳のオランダの成人を対象とした大規模な調査の結果を示す(Smit CH, et al. J Clin Psycho, 1997)。{9356898}
    Raven’s colored progressive matrices (RCPM) short form (SF)として、検査のスコアはA+Bの24点満点とした。流動性IQは後半のセットBがよく反映すると考えられている。低学歴は0~9年、中学歴は10~15年、高学歴は16年以上に設定した。年齢と学歴は明らかにRCPMのパフォーマンスに影響した。年齢(F(5,2809) 1201.1, p .001)と教育(F(2,2812) 2062.0, p .001)はともに有意であったのに対し性別(F(1,2813) 2.2; ns)は有意でなかった。

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    11. JART知的機能簡易評価(Japanese Adult Reading Test)

    National Adult Reading Test (NART)の日本語版として松岡らによって作成された{医中誌; 2002251854}。NARTは綴りに対して例外的な音読の単語で構成されており、WAISのIQとよく相関するとされている。JARTでは、漢字熟語を単漢字の読みをそのまま音読できる規則読み漢字、例えば「階段(かいだん)」50 項目と、普通には読めない不規則読み漢字(熟字訓)、例えば「案山子(かかし)」) 50 項目の100 項目からなる。松岡らの報告によると、健常者では20歳代から70歳以上で成績に差はなく、不規則読み、規則読み熟語ともにI Qとの相関(r=0.65、0.72)。また軽度認知障害のレベルでは不規則読み、規則読み熟語の成績に差は認められなかった。重要なことに、JARTは軽度認知障害患者の病前IQの推測に役立つ可能性が示唆された。現在では50項目、25項目などの短縮版が標準化されている。

    読み熟語の例
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    National Adult Reading Test (NART)の日本語版として松岡らによって作成された{医中誌; 2002251854}。NARTは綴りに対して例外的な音読の単語で構成されており、WAISのIQとよく相関するとされている。JARTでは、漢字熟語を単漢字の読みをそのまま音読できる規則読み漢字、例えば「階段(かいだん)」50 項目と、普通には読めない不規則読み漢字(熟字訓)、例えば「案山子(かかし)」) 50 項目の100 項目からなる。松岡らの報告によると、健常者では20歳代から70歳以上で成績に差はなく、不規則読み、規則読み熟語ともにI Qとの相関(r=0.65、0.72)。また軽度認知障害のレベルでは不規則読み、規則読み熟語の成績に差は認められなかった。重要なことに、JARTは軽度認知障害患者の病前IQの推測に役立つ可能性が示唆された。現在では50項目、25項目などの短縮版が標準化されている。

    読み熟語の例
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    12. Wechsler Memory Scale-Revised (WMS-R)

     WMS-Rは13の下位検査から構成され、5つの記憶指標として示される。指標は平均が100、標準偏差が15になるように設定されている。日本版は杉下により標準化(16歳から74歳)されている。なお、WMSは2009年にWMS-IVが発表されているが、日本版は出ていない。検査数が多く高齢者の場合には負担が大きい。問題が難しいので、被験者の気持ちを傷つけてしまう、といったことが指摘されている。

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     著者らの経験では、軽度のADやaMCIの患者では遅延再生の指標値が悪く、注意集中の指標値の値は比較的保たれている症例が多い。ADNI検査ではWMS-Rの遅延再生である論理記憶IIの粗点を使い、健常者、aMCI、ADを以下のように分類している。

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     著者らの経験では、軽度のADやaMCIの患者では遅延再生の指標値が悪く、注意集中の指標値の値は比較的保たれている症例が多い。ADNI検査ではWMS-Rの遅延再生である論理記憶IIの粗点を使い、健常者、aMCI、ADを以下のように分類している。

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    13. Rivermead Behavioral Memory Test (RBMT)

     RBMTはオックスフォード大学のリバーミード・リハビリテーションセンターで開発されたもので、日々の生活の記憶検査を実施する。対象の範囲は17歳から90歳でWMS-Rよりも高齢者に対応している (日本語版はないが、WMS-IVは16歳から90歳まで対応)。再検査もできるように2種類が用意されている。RBMT-3では14の下位検査で構成されている。素点を採点したのち、平均10、標準偏差が3になるよう換算する。合計点も平均が100、標準偏差が15になるように換算して提示される。検査には普通の家を模した内装の検査室が必要となる。

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    14. Rey Auditory Verbal Learning Test (RAVLT)

    言語記憶の評価法で、15単語を繰り返し記憶していく過程での成績を調べる。1) リストAの15単語の即時再生、2) リストAの記憶学習を5回繰り返す系列学習曲線、3) リストBの単語を記憶する干渉課題、4) リストAの遅延再生と再認で構成されている。

    ①リストAの単語を1秒ずつ読み上げて記憶してもらう。覚えている単語を言ってもらう。(即時記憶)
    ②~⑤リストAの単語を再度読み上げて、覚えている単語を言ってもらう。これを5回試行する。(学習)
    ①’リストBの単語を読み上げて、覚えている単語を言ってもらう。(干渉)
    ⑥リストAの単語を思い出してもらう。(遅延再生)
    ⑦ダミーの単語を含めた50の単語リストを提示して、リストAの単語を選択してもらう。(再認)

    RAVLTの成績
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    (Correia AF, et al. より) {24014180}
    RAVLT(日本語訳)
    Stacks Image 10385
    *英文では意味が似ている単語、音韻が類似している単語を考慮して構成されている。Drum-Desk、Bell-Birdなど。

    言語記憶の評価法で、15単語を繰り返し記憶していく過程での成績を調べる。1) リストAの15単語の即時再生、2) リストAの記憶学習を5回繰り返す系列学習曲線、3) リストBの単語を記憶する干渉課題、4) リストAの遅延再生と再認で構成されている。

    ①リストAの単語を1秒ずつ読み上げて記憶してもらう。覚えている単語を言ってもらう。(即時記憶)
    ②~⑤リストAの単語を再度読み上げて、覚えている単語を言ってもらう。これを5回試行する。(学習)
    ①’リストBの単語を読み上げて、覚えている単語を言ってもらう。(干渉)
    ⑥リストAの単語を思い出してもらう。(遅延再生)
    ⑦ダミーの単語を含めた50の単語リストを提示して、リストAの単語を選択してもらう。(再認)

    RAVLTの成績
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    (Correia AF, et al. より) {24014180}
    RAVLT(日本語訳)
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    *英文では意味が似ている単語、音韻が類似している単語を考慮して構成されている。Drum-Desk、Bell-Birdなど。
    15. Free and Cued Selective Reminding Test (FCSRT)

    ニューヨークのAlbert Einstein college of medicine のGroberらによって開発された記憶検査で{3368071}16の言葉を記憶してヒントなしの自由再生(free recall)とカテゴリーを提示して想起するヒント再生(cued recall)を繰り返して学習してもらう検査。表のようにカテゴリーがそれぞれ異なる16の単語が3セット用意されている。ヒント再生の場合は、フルーツの名前は?- ぶどう、花の名前は?-チューリップのように、カテゴリーをたよりに言葉を想起してもらう。学習回数は3回で、学習の進捗具合も評価する。
     ① 4つの描画のある1枚のカードを提示し、検者はカテゴリー(花の名前?)を言って被験者にそのカテゴリーの絵(水仙)をさしてもらって、”水仙“と言ってもらう。4つすべて命名し終わったら、そのカードを隠して、4つの名前をヒント再生してもらう。これを4つとも覚えるまで繰り返し(最大3回まで)、すべてヒント再生できたら次のカードに移り、4枚(計16単語)をすべて記憶してもらう。
     ② 20秒間の干渉課題(数字の逆唱)後に、2分間に16単語をできるだけ自由再生(free recall)してもらう。Free immediate recall (free IR)
     ③ 自由再生できなかった単語のカテゴリーを言ってヒント再生(cued recall)を10秒以内にしてもらう。Cued immediate recall (cued IR)
     ④ ヒント再生でも思い出せなかった単語のカテゴリーと単語は再度記憶してもらい、②に戻る。これを合計3回繰り返し学習効果を観察する。
     ⑤ 20〜30分後に自由想起とヒント想起をしてもらう。(Delayed free and cued recall)

    FCSRTによるMCI100例とAD70例の報告では{24894485}、即時再生の3回の合計(最大48)のカットオフ値を35以下、同様に遅延再生のカットオフ値を12とした場合のMCIに対する感度と特異度はそれぞれ0.72/0.83と0.76/0.81であった。ADの場合、それぞれのカットオフ値を27(即時)と8(遅延)以下にした場合、0.94/0.99、0.96/0.97であった。FTDとADを比較した論文では{25062746}、 ADでは3回の繰り返しで学習効果があまり見られなかったのに対し、bv-FTDではある程度の学習効果が認められた。このようにFCSRTでは学習過程での成績の変化も評価の対象となる。
    表はパリのサルペトリエール大学病院のメモリーセンターのデータを報告
    {28222300} 。この表のcue effect(CE)は、CE = (total IR-free IR)/(48-freeIR) として求めている。また、”instrusions”は、free DR時に無関係な単語を述べた数になる。free IRの閾値を17/48あるいはtotal IRの閾値を40/48にした際にADとその他の疾患との鑑別は、感度100%、特異度74.8%であった。Intrusionの数を4で分けた際の感度と特異度はそれぞれ83%と72%であった。このようにFCSRTはADとその他の認知症疾患との鑑別に有用であることが示されている。しかし、個々の症例レベルでの鑑別は十分ではなかった。

    Stages of Objective Memory Impairment (SOMI) systemは、FCSRTによるスコアーを0〜4の5段階に分類するシステムで、Braakステージで定義されるAD神経病理学的変化および神経原線維変化(NFT)病理の範囲を高い精度で予測し、その精度はCDR-SB(Clinical Dementia Rating Scale sum of boxes)と同等であった{33492286}
    FCSRTはAnti-Amyloid Treatment in Asymptomatic Alzheimer’s Disease (A4) studyで採用されており、今後多くのデータが集積されると思われる。A4 studyは、治験薬であるソラネズマブが、アルツハイマー病患者の脳内でプラークを形成するタンパク質であるアミロイドに関連した記憶障害の進行を遅らせることができるかどうかを検証する研究で、米国、カナダ、オーストラリア、日本で実施されている多施設共同臨床試験。65〜85歳で認知機能が正常、ADLが自立している被検者を対象にしている。他にMini-Mental State Examination(MMSE)スコアが25~30点であること、グローバル臨床認知症評価(CDR-SB)が0点、論理的記憶力IIの指標が6-18点などの条件が設定されている。アミロイドPETで、スクリーニング時に脳内にアミロイドの蓄積が確認されているとエントリーの対象となる。Groberらの報告
    {35197359}によると、年齢、性、学歴、APOE e4で補正した共分散分析で、SOMIステージが高いほど、脳全体のアミロイドSUVTが高い結果であった(p<0.0001)。

    FCSRTの3パターン
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    *FCSRT-IRの滋賀医大版では「水差し」を「やかん」、「プレッツェル」を「食パン」、「剣」を「刀」に変更している。NTT日本語データベースに掲載されている親密度(文字音声、音声)の点数が、この3単語において低いためで、特にプレッツェルはデータそのものがなく日本人には使えないと思われる。
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    ニューヨークのAlbert Einstein college of medicine のGroberらによって開発された記憶検査で{3368071}16の言葉を記憶してヒントなしの自由再生(free recall)とカテゴリーを提示して想起するヒント再生(cued recall)を繰り返して学習してもらう検査。表のようにカテゴリーがそれぞれ異なる16の単語が3セット用意されている。ヒント再生の場合は、フルーツの名前は?- ぶどう、花の名前は?-チューリップのように、カテゴリーをたよりに言葉を想起してもらう。学習回数は3回で、学習の進捗具合も評価する。
     ① 4つの描画のある1枚のカードを提示し、検者はカテゴリー(花の名前?)を言って被験者にそのカテゴリーの絵(水仙)をさしてもらって、”水仙“と言ってもらう。4つすべて命名し終わったら、そのカードを隠して、4つの名前をヒント再生してもらう。これを4つとも覚えるまで繰り返し(最大3回まで)、すべてヒント再生できたら次のカードに移り、4枚(計16単語)をすべて記憶してもらう。
     ② 20秒間の干渉課題(数字の逆唱)後に、2分間に16単語をできるだけ自由再生(free recall)してもらう。Free immediate recall (free IR)
     ③ 自由再生できなかった単語のカテゴリーを言ってヒント再生(cued recall)を10秒以内にしてもらう。Cued immediate recall (cued IR)
     ④ ヒント再生でも思い出せなかった単語のカテゴリーと単語は再度記憶してもらい、②に戻る。これを合計3回繰り返し学習効果を観察する。
     ⑤ 20〜30分後に自由想起とヒント想起をしてもらう。(Delayed free and cued recall)

    FCSRTによるMCI100例とAD70例の報告では{24894485}、即時再生の3回の合計(最大48)のカットオフ値を35以下、同様に遅延再生のカットオフ値を12とした場合のMCIに対する感度と特異度はそれぞれ0.72/0.83と0.76/0.81であった。ADの場合、それぞれのカットオフ値を27(即時)と8(遅延)以下にした場合、0.94/0.99、0.96/0.97であった。FTDとADを比較した論文では{25062746}、 ADでは3回の繰り返しで学習効果があまり見られなかったのに対し、bv-FTDではある程度の学習効果が認められた。このようにFCSRTでは学習過程での成績の変化も評価の対象となる。
    表はパリのサルペトリエール大学病院のメモリーセンターのデータを報告
    {28222300} 。この表のcue effect(CE)は、CE = (total IR-free IR)/(48-freeIR) として求めている。また、”instrusions”は、free DR時に無関係な単語を述べた数になる。free IRの閾値を17/48あるいはtotal IRの閾値を40/48にした際にADとその他の疾患との鑑別は、感度100%、特異度74.8%であった。Intrusionの数を4で分けた際の感度と特異度はそれぞれ83%と72%であった。このようにFCSRTはADとその他の認知症疾患との鑑別に有用であることが示されている。しかし、個々の症例レベルでの鑑別は十分ではなかった。

    Stages of Objective Memory Impairment (SOMI) systemは、FCSRTによるスコアーを0〜4の5段階に分類するシステムで、Braakステージで定義されるAD神経病理学的変化および神経原線維変化(NFT)病理の範囲を高い精度で予測し、その精度はCDR-SB(Clinical Dementia Rating Scale sum of boxes)と同等であった{33492286}
    FCSRTはAnti-Amyloid Treatment in Asymptomatic Alzheimer’s Disease (A4) studyで採用されており、今後多くのデータが集積されると思われる。A4 studyは、治験薬であるソラネズマブが、アルツハイマー病患者の脳内でプラークを形成するタンパク質であるアミロイドに関連した記憶障害の進行を遅らせることができるかどうかを検証する研究で、米国、カナダ、オーストラリア、日本で実施されている多施設共同臨床試験。65〜85歳で認知機能が正常、ADLが自立している被検者を対象にしている。他にMini-Mental State Examination(MMSE)スコアが25~30点であること、グローバル臨床認知症評価(CDR-SB)が0点、論理的記憶力IIの指標が6-18点などの条件が設定されている。アミロイドPETで、スクリーニング時に脳内にアミロイドの蓄積が確認されているとエントリーの対象となる。Groberらの報告
    {35197359}によると、年齢、性、学歴、APOE e4で補正した共分散分析で、SOMIステージが高いほど、脳全体のアミロイドSUVTが高い結果であった(p<0.0001)。

    FCSRTの3パターン
    Stacks Image 5941
    *FCSRT-IRの滋賀医大版では「水差し」を「やかん」、「プレッツェル」を「食パン」、「剣」を「刀」に変更している。NTT日本語データベースに掲載されている親密度(文字音声、音声)の点数が、この3単語において低いためで、特にプレッツェルはデータそのものがなく日本人には使えないと思われる。
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    ステップ1:総再生(TR)のスコアをチェックする

            TR3344点以下→ 即座に ステージ 4 と判定。
            TR4546  ヒントを出してもあまり思い出せないため、 ステージ 3 と判定。
            TR47点以上→(正常~ほぼ正常)記憶自体は脳に保存されているため、ステップ2FRのチェック)へ進む。
    ステップ2:自由再生(FR)のスコアをチェックする 
    TRが正常だった場合、次は自由再生を見て、検索力のレベルをチェックする。
            FR31点以上  自力でも問題なく思い出せているため、 ステージ 0(正常)
            FR2530  自力での思い出しにわずかな引っかかりがあるため、 ステージ 1(軽度検索障害)
            FR2024  自力で思い出す力が明らかに落ちているため、 ステージ 2(中等度検索障害)

    疾患ごとのFCSRTの成績、他検査との比較
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    Stacks Image 9701
    表の上段は平均値、下段は標準偏差を示す。ADと比較してp<0.001を赤p<0.01を緑で提示 。
    16. Benton Visual Retention Test

     主に視覚性認知と記憶を調べる検査。1~3個の図形が描かれた用紙10枚が3セット用意されている。被験者はこの図形をみて、以下の5通りの方法で答える。

    A
    1つの図形を10秒間だけみて再生する
    B
    1つの図形を5秒間だけみて再生する
    C
    図形を見ながら模写する(時間制限なし)
    D
    1つの図形を10秒間見て、15秒待ってから再生する
    M
    1つの図形を10秒間見て、4つの図形から同じものを選ぶ


    10枚のうち、最初の2枚は単一図形、次の1枚は2個の図形、残りの7枚は3個の図形が描かれている。複数の図形の場合、右あるいは左端にある図形(周辺図形)は相対的に小さい図形で、半側空間無視や視野障害による見逃しを誘発しやすくしている。

    例図はM法で、上段の図を見た後に同じ図形を下段の4つの中から選択してもらう。
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     主に視覚性認知と記憶を調べる検査。1~3個の図形が描かれた用紙10枚が3セット用意されている。被験者はこの図形をみて、以下の5通りの方法で答える。

    A
    1つの図形を10秒間だけみて再生する
    B
    1つの図形を5秒間だけみて再生する
    C
    図形を見ながら模写する(時間制限なし)
    D
    1つの図形を10秒間見て、15秒待ってから再生する
    M
    1つの図形を10秒間見て、4つの図形から同じものを選ぶ


    10枚のうち、最初の2枚は単一図形、次の1枚は2個の図形、残りの7枚は3個の図形が描かれている。複数の図形の場合、右あるいは左端にある図形(周辺図形)は相対的に小さい図形で、半側空間無視や視野障害による見逃しを誘発しやすくしている。

    例図はM法で、上段の図を見た後に同じ図形を下段の4つの中から選択してもらう。
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    17. 標準言語対連合学習検査 (Standard verbal paired-associate learning test)

    言語性記憶の検査で、やや古い三宅式記銘力検査に替わる検査として日本高次脳機能障害学会が開発した。時代を考慮した対語の選択と、全国レベルでデータ収集を実施、さらに年齢別の判定基準を導入し、標準化が行われている。本検査は有関係対語(意味的に関連のある単語)10対と、無関係対語(意味的関連が希薄な単語)10対より構成されている。その組み合わせを検査者が読み上げ、被検査者に記憶してもらい、その後、単語対のはじめの単語を提示して、その語と対をなしていたもう一方の単語を応えてもらう。難易度に差がない3セット(セットA.B.C)が用意されている。

    18. 三宅式記銘力検査

    有関係対語(意味的に関連のある単語)10対と、無関係対語(意味的関連が希薄な単語)10対より構成されている。これから私が言葉を言いますので覚えて下さい」。例えば「春…(間を置く)桜、魚…刺身、のように全部で10組の言葉を私が言います」。「次に、私が春と言ったら桜」。「魚と言ったら刺身のように答えて下さい」。
    初めの単語と対後の読み上げは2秒程度の間隔を開けて読む。有関係対後10組みを読み上げたのち、初めの単語を言い、対後を思い出してもらう。これを3回繰り返す。全問正解出来たら繰り返す必要はない。同様に無関係対語でも実施する。

    有関係対語
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    無関係対語
    Stacks Image 5997
    19. Kohs Block Design Test (コース立方体組み合わせテスト)

    Samuel C. Kohsによって開発されたもので、立方体を組合せて指定された図柄を完成させる課題を提示し、完成までの時間を測定して視空間機能に関する知能を検査する。所要時間は20〜50分、平均35分となっている。言語を使わないので聴覚障害のある症例などに用いられることが多い。時間を測定するので、視空間機能以外に注意、遂行機能(保続、ルール無視、衝動的、途中放棄など)といった前頭葉の機能も関与すると考えられている。結果は年齢に応じて知能指数として評価される。

    立方体の6面は白、青、黄、赤、白-赤、青-黄に塗られており、全部で18個用意されている。問題は難易度順に17問設定されており、時間制限をオーバーしたら打ち切る。実施中に間違いの場所を指摘しても良い。次の問題に進む時は、並べた立方体をバラバラにする。総得点は131点となる。

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    コース立方体組み合わせテスト得点表
    Stacks Image 6016
    Stacks Image 9705
    Stacks Image 9703
    Stacks Image 6018

    IQの求め方:
    換算表よりコース得点から精神年齢(MA)と13歳以上の場合の暦年齢(CA)を修正表から求めて、
    IQ = MA/CA × 100
    18歳以上の場合はCA=16となる。
    例えば、50歳の被検者の得点数が100点の場合、MA=15歳10か月になるので、
    IQ=(15+10/12)÷16×100=98.96
    得点が87の時、MA=14歳10か月、IQ=92.7
    得点が37の時、MA=11歳1か月、IQ=69.3
    得点が31の時、MA=10歳7か月、IQ=66.1
    得点が13の時、MA=8歳4か月、IQ=52.1
    られている。結果は年齢に応じて知能指数として評価される。

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    18歳以上の被検者における得点とIQ
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    20. Clock Drawing Test (CDT)

    多くのスクリーニング検査の1つとして取り入れられている。白紙の状態から描かせる場合(白紙法)と円が前もって用意されている場合(外円法)がある。数字の配置や時間の概念などが試されるので、運動能力以外に、視空間能力、言語理解、遂行能力などが関係する。検査は簡便で魅力的であるが、定量的な評価が難しく、評価法も多様で統一性を欠く。マサチューセッツ工科大学では、ペンタブレットを用いて描画した結果を人口知能を用いて解析するソフトを開発している。ペンの空気中での動きやタブレット表面での動きの解析、その時間なども測定している。

    CDTには多くの評価法が報告されている。ここでは、外円法のうち、比較的評価が理解しやすいManos法について述べる。
    数字の12の位置を基準に図のように8分割する。8分割したゾーンに、3、6、9、12以外の8個の数字が正しく位置していれば1点、さらに長針が11時、短針が2(10分)に向いているが、それぞれ1点(合計10点)。
    我々はこれを拡大して、12、3、6、9が正しい位置にあれば、それぞれ2点、針の中心が正しい位置にあれば1点、長針と短針が区別できていれば1点(合計20点)で評価している。なお、この評価法はAIを前提としているので、記入された数字が定められたゾーンに収まっている範囲で認識できる程度に入っていればOKとする。

    Stacks Image 10428

    CDTには多くの評価法が報告されている。ここでは、外円法のうち、比較的評価が理解しやすいManos法について述べる。
    数字の12の位置を基準に図のように8分割する。8分割したゾーンに、3、6、9、12以外の8個の数字が正しく位置していれば1点、さらに長針が11時、短針が2(10分)に向いているが、それぞれ1点(合計10点)。
    我々はこれを拡大して、12、3、6、9が正しい位置にあれば、それぞれ2点、針の中心が正しい位置にあれば1点、長針と短針が区別できていれば1点(合計20点)で評価している。なお、この評価法はAIを前提としているので、記入された数字が定められたゾーンに収まっている範囲で認識できる程度に入っていればOKとする。

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    21. Rey-Osterrieth Complex Figure Test (ROCFT)

    視覚性記憶を評価する検査であるが、構成機能や巧緻運動も評価することが可能である。1941年にスイスのAndre Rayによって開発され、1944年に同じ教室のPaul-Alexandre Osterriethによって評価法が確立された。
    ⓵ 図形を模写してもらう (copying)
    ⓶ 図形を見ないで再生してもらう
    ⓷ 干渉課題(数分から数十分まで報告により色々)
    ⓸ 遅延再生

    採点方法にはOsterriethの方法以外にChervinskyのorganization scoring system(OSS)法が知られている。

    視覚性記憶を評価する検査であるが、構成機能や巧緻運動も評価することが可能である。1941年にスイスのAndre Rayによって開発され、1944年に同じ教室のPaul-Alexandre Osterriethによって評価法が確立された。
    ⓵ 図形を模写してもらう (copying)
    ⓶ 図形を見ないで再生してもらう
    ⓷ 干渉課題(数分から数十分まで報告により色々)
    ⓸ 遅延再生

    採点方法にはOsterriethの方法以外にChervinskyのorganization scoring system(OSS)法が知られている。

    Rey-Osterrich複雑図形の18ユニット

    1. 大きな長方形の外部にある左上隅の十字架
    2. 大きな長方形
    3. 大きな長方形の内部の対角線
    4. 大きな長方形の内部の水平線
    5. 大きな長方形の内部の垂直線
    6. 大きな長方形の左隅にある小さな長方形
    7. 小さな長方形の上の短い線分
    8. 大きな長方形内の左上部の4本の平行線
    9. 大きな長方形の右上に付いている三角形
    10. 上記三角形の下の大きな長方形の中の短い垂直線
    11. 大きな長方形の内部にある3つの点を含んだ円
    12. 大きな長方形の右下にあり、対角線を横断している5本の平行線
    13. 大きな長方形の右側に付いている三角形の2辺
    14. 上記三角形に付いている菱形
    15. 上記三角形の内部の垂直線
    16. 上記三角形の内部の水平線
    17. 大きな長方形の下部の十字架
    18. 大きな長方形の下部に付いている長方形

    Stacks Image 10442

    携帯、位置ともに正しい-2点
    携帯は正しいが、位置は不正確-1点
    形態は歪んでいるか不完全であるが位置は正しい -1点
    形態は歪んでおり、位置も不正確-0.5点
    形態の認識が不能、あるいは図が欠けている-0点

    18ユニットごとに採点(満点=36点)

    Rey-Osterrich複雑図形の18ユニット
    Stacks Image 6055

    1. 大きな長方形の外部にある左上隅の十字架
    2. 大きな長方形
    3. 大きな長方形の内部の対角線
    4. 大きな長方形の内部の水平線
    5. 大きな長方形の内部の垂直線
    6. 大きな長方形の左隅にある小さな長方形
    7. 小さな長方形の上の短い線分
    8. 大きな長方形内の左上部の4本の平行線
    9. 大きな長方形の右上に付いている三角形
    10. 上記三角形の下の大きな長方形の中の短い垂直線
    11. 大きな長方形の内部にある3つの点を含んだ円
    12. 大きな長方形の右下にあり、対角線を横断している5本の平行線
    13. 大きな長方形の右側に付いている三角形の2辺
    14. 上記三角形に付いている菱形
    15. 上記三角形の内部の垂直線
    16. 上記三角形の内部の水平線
    17. 大きな長方形の下部の十字架
    18. 大きな長方形の下部に付いている長方形

    携帯、位置ともに正しい-2点
    携帯は正しいが、位置は不正確-1点
    形態は歪んでいるか不完全であるが位置は正しい -1点
    形態は歪んでおり、位置も不正確-0.5点
    形態の認識が不能、あるいは図が欠けている-0点

    18ユニットごとに採点(満点=36点)

    日本では東北大学の葛西らの625名(CDR0=412、0.5=168、1以上45)を対象とした報告がある{16594936}。採点の手法はOsterriethと同じで、模写、直後、遅延再生10分、遅延再生30分で実施された。健常者において、模写の成績は学歴と年齢にによって有意な差が認められた。

    Stacks Image 10453

    日本では東北大学の葛西らの625名(CDR0=412、0.5=168、1以上45)を対象とした報告がある{16594936}。採点の手法はOsterriethと同じで、模写、直後、遅延再生10分、遅延再生30分で実施された。健常者において、模写の成績は学歴と年齢にによって有意な差が認められた。

    Stacks Image 6066
    22. Noise Pareidolia Test

    40枚の白黒の視覚ノイズパネルを提示する。その中の8枚にのみヒトの顔が埋め込まれており、被検者はパネルごとに顔があるかないかを答える。開始する前に3枚のパネルで練習してもらう。所要時間は約15分。
    各パネルは最大30秒提示し、回答の正否に関わらず、被験者へのフィードバックは行わない。誤りとして(1)顔のない画像に誤って顔を発見する(錯覚反応)、(2)埋め込まれた顔を発見できない(検出ミス)、の2の可能性がある。


    これから、白黒のランダムなパターンをお見せします。その中の一部には、人間の顔が重なっています。顔を見つけたら、「はい」と答えて、顔の見える場所を教えてください。顔がない場合は、「いいえ」と答えてください。

    練習問題
    「この絵の中に、顔が見えますか?」
    1枚目:被験者の回答が「はい」の場合、検者は「その通りです」「正解です」と言って、次の絵に進みます。被験者の回答が「いいえ」の場合、検者は顔を指差し、「ここに顔がありますから、正解は『はい』です」と言います。
    2枚目:被験者が「ある」と答えた場合、検者は「顔はありません。正解は 「いいえ」です。
    3枚目:被験者の回答が「はい」の場合、検者は「その通りです」「正解です」と言う。被験者の回答が「いいえ」の場合、検者は顔を指差し、「ここに顔がありますから、正解は『はい』です」と言います。

    練習課題の目的は、刺激には顔のあるものと顔のないものの2種類があることを理解させることである。
    被験者が「人の顔か動物の顔か」と質問したら、試験官は「関係ない。どちらでもよい」と答える。


    本試験
    試験官は刺激を1つずつ提示する。各刺激の提示時間は最大30秒である。被験者は、それぞれの刺激に顔があるかないかを判断する必要がある。制限時間30秒以内に被験者が明確に回答した場合、試験官は次の刺激に移る。回答の正否に関わらず、被験者へのフィードバックは行わない。

    Mamiyaらは、52名のレビー小体型認知症(DLB)、52名のアルツハイマー病(AD)、20名の健常者(HC)におけるパレイドリアテストの報告
    {27171377}をしている。ノイズパレイドリアテストにおける錯覚反応の平均数は、DLBで7.3 (±8.4)、ADで1.1 (±2.5)、HCで0.2 (±0.4) であった。DLB群はAD(p<0.01)、HC群(p<0.01)よりも、AD群はHC群(p=0.03)よりも多くの錯覚反応が観られた。正答数は、DLB群31.8(±8.8)、AD群38.5(±2.5)、HC群39.9(±0.4)であった。検出ミスの数は、DLBで1.2(±1.5)、ADで0.5(±0.8)、HCで0.0(±0.0)であった。DLBとAD群(p=0.01)、DLBとHC群(p=0.8)の間で有意差が認められた。
    顔のない32枚のパネルに対する正答数のカットオフを2/3とした際のDLB/ADの鑑別の感度と特異度は、60%/92%、AUCは0.82であった。

    練習用1枚目
    Stacks Image 8157
    練習用2枚目
    Stacks Image 8159
    練習用3枚目
    Stacks Image 8161
    23. Wisconsin Card Sorting Test (WCST)

     WCSTはGrant DAとBerg EAによって開発された前頭葉機能検査で、高次の保続の有無を評価する検査としてよく使われている。WCSTでは128枚のカ-ドを用いるが、WCST Random Layoutは64枚のカ-ドを用いる。日本では検査の負担を軽くする目的で48枚のカ-ドからなるKWCSTが慶應版として市販されており、30分程度の時間で検査できるようになっている。さらに小林らはPCを利用した方法(WCST-KFS)を発表し、無償でソフトを配布している(適応OSはWindows7まで)。

     色、形、数がそれぞれ4種類あるカ-ドを用意しておき、図のように被験者に提示する。被験者は検者が答える正解-不正解の答えだけを手掛かりにして、検者が考えている分類カテゴリ-を推測(色or形or数)して提示された4枚のカ-ドの何れか1枚を選択する。検者は被験者が連続して正答したら(通常は6回)、被験者には知らせずに分類カテゴリ-を変更(色、形、数...の順)して正解-不正解の答えを提示する。KWCSTでは、刺激カ-ド4枚、反応カ-ド48枚(1シリ-ズ 24枚)で構成されている。反応カ-ドの提示順を工夫して分類カテゴリ-が連続しないように設定されている。すなわち1つ前のカ-ドとは、色、形、数がすべて異なるように配置して、最大2回の誤反応後には正解がわかるようになっている。さらにKWCSTでは第2段階として、被験者に途中でカテゴリ-が変更されることを教えて、同じ検査を実施する。もし第1段階でカテゴリ-の達成数が4以上であれば、第2段階は実施しない。

    Stacks Image 10460

     色、形、数がそれぞれ4種類あるカ-ドを用意しておき、図のように被験者に提示する。被験者は検者が答える正解-不正解の答えだけを手掛かりにして、検者が考えている分類カテゴリ-を推測(色or形or数)して提示された4枚のカ-ドの何れか1枚を選択する。検者は被験者が連続して正答したら(通常は6回)、被験者には知らせずに分類カテゴリ-を変更(色、形、数...の順)して正解-不正解の答えを提示する。KWCSTでは、刺激カ-ド4枚、反応カ-ド48枚(1シリ-ズ 24枚)で構成されている。反応カ-ドの提示順を工夫して分類カテゴリ-が連続しないように設定されている。すなわち1つ前のカ-ドとは、色、形、数がすべて異なるように配置して、最大2回の誤反応後には正解がわかるようになっている。さらにKWCSTでは第2段階として、被験者に途中でカテゴリ-が変更されることを教えて、同じ検査を実施する。もし第1段階でカテゴリ-の達成数が4以上であれば、第2段階は実施しない。

    Stacks Image 6079

     評価は達成されたカテゴリ-数、保続数(ネルソン型)、分類カテゴリ-が変化した後の保続性誤り数(ミルナ-型)によって行う。なお、直前の誤反応と同じ誤りする場合をネルソン(Nelson)型の保続、直前の達成カテゴリ-に固執した誤りをつづける場合をミルナ-(Milner型)の保続という。また、記憶や注意障害の批評として、セットの維持困難がある。これは、2〜5回連続正答したにもかかわらず、誤反応した数になる。

    24. Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome (BADS)

     前頭葉の機能のうち、遂行機能を評価するための検査で、Wilsonらにより開発された。6種類の下位検査と1つの質問紙で構成され、下位検査は課題の達成度と所要時間により0〜4点で評価する。

    BADSの下位検査

    ① 規則変換カ-ド検査(Rule Shift Cards Test):トランプと同じ図柄の21枚のカ-ドを用いて、2種類の課題を行う。最初の課題では、めくられたカ-ドが赤(ダイヤ/ハ-ト)であれば「はい」、黒(クラブ/スペ-ド)であれば「いいえ」と答えてもらう。次の課題ではめくったカ-ドが直前のカ-ドと同じ色なら「はい」、違う色なら「いいえ」と答えてもらう。誤りの回数と所要時間を記録する。

    ② 行為計画検査(Action Program Test): 写真に示した道具を用いて行う。被験者は細長いシリンダ-の中にあるコルクを取り出すように指示されるが、シリンダ-を持ち上げることや水の入っているビーカーの蓋を手で直接開けることは禁止される。被験者がコルクを取り出すためには、ⅰ)針金のフックでビ-カ-の蓋をはずし、ⅱ)小容器にねじ底を付けて、ⅲ)小容器でビ-カ-の水を汲み、ⅳ)それをでシリンダ-に入れ、ⅴ)これを繰り返してコルクを浮かせて取り出す。独力でできたステップ数で評価する。

    Stacks Image 6093

    ③ 鍵探し検査(Key Search Test): 図の黒い点に自分がいると仮定して、四角の範囲の原野のどこかに落ちている鍵を探すために歩く奇跡を一筆書きで描いてもらう。評価は例えば、入点や終点が原野(四角)の端になっているか、線の連続性、原野での奇跡(並行、斜、渦巻き、網羅できているかどうか)を見て点数をつける。

    Stacks Image 6100

    ③ 鍵探し検査(Key Search Test): 図の黒い点に自分がいると仮定して、四角の範囲の原野のどこかに落ちている鍵を探すために歩く奇跡を一筆書きで描いてもらう。評価は例えば、入点や終点が原野(四角)の端になっているか、線の連続性、原野での奇跡(並行、斜、渦巻き、網羅できているかどうか)を見て点数をつける。

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    Stacks Image 6120
    想定されるパターン
    Stacks Image 6115
    採点
    Stacks Image 6110
    Stacks Image 9730
    想定されるパターン
    Stacks Image 9725
    採点
    Stacks Image 9720

    ④ 時間判断検査(Temporal Judgement Test): 4つのできごとに要する大まかな時間を答えてもらう。例えば、ⅰ)やかんのお湯の沸騰、ⅱ)カメラのセルフタイマ-、ⅲ) 風船を膨らませる時間、ⅳ)犬の寿命など。正解はないが、常識的な答えができるかどうかを評価する。

    ⑤ 動物園地図検査(Zoo Map Test): 動物園の入り口から広場までの道順を計画してもらう。その際に6箇所の指定された場所を訪れる必要があること、影のついている道は何度でも通れるが、影のついていない道は1度しか通れない、ラクダ道も1度しか通れない(ラクダに1度だけ乗れる)。
    1回目:ゾウ、ライオン、ロバ、喫茶店、クマ、トリ小屋に行くよう指示(順番はどうでもよい)。
    2回目:今度は以下の順番に従って道筋を考えるように指示する。ロバ→ゾウ→喫茶店→クマ→ライオン→トリ小屋→広場。

    Stacks Image 10467

    文献 PMID {22729461}より引用 (日本語に改変)

    ⑤ 動物園地図検査(Zoo Map Test): 動物園の入り口から広場までの道順を計画してもらう。その際に6箇所の指定された場所を訪れる必要があること、影のついている道は何度でも通れるが、影のついていない道は1度しか通れない、ラクダ道も1度しか通れない(ラクダに1度だけ乗れる)。
    1回目:ゾウ、ライオン、ロバ、喫茶店、クマ、トリ小屋に行くよう指示(順番はどうでもよい)。
    2回目:今度は以下の順番に従って道筋を考えるように指示する。ロバ→ゾウ→喫茶店→クマ→ライオン→トリ小屋→広場。

    Stacks Image 6126

    文献 PMID {22729461}より引用 (日本語に改変)

    ⑥ 修正6要素検査(Modified Six Elements Test): 2セットの口述(過去の出来事を録音機に吹き込む)、2セットの計算、2セットの絵の呼称からなる。複数の課題に対する時間分配能力を評価する。10分間に6課題すべてに手をつけるよう指示をするが、続けて同じ課題をしてはならないというル-ルを設定する。実際には、10分間ですべての課題はできないようになっており、ル-ルを守って6課題すべてに手を付けたかどうかで評価する。

    質問紙による遂行機能障害の評価; Dysexecutive Questionnaire(DEX)
    質問紙による問診で20項目からなる。点数が高いほど遂行機能の低下と解釈される。

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    25. Frontal Assessment Battery (FAB)

    前頭葉機能のスクリ-ニング検査としてDuboisらが開発した検査で、特別な器具を必要としないため日常の臨床検査として利用しやすい。類似性、語の流暢性、運動系列、葛藤指示、Go/No-Go課題(抑制制御)、把握行動の6項目からなる。各項目は0〜3の計18点の評価となっている。

    Stacks Image 10480
    Stacks Image 10474
    Stacks Image 6144
    Stacks Image 6146

     FTDとADを比較した研究では{15262742}、MMSEの成績には差はなかったものの、FABの成績はFTDが4.6 ± 4.2であったのに対し、ADでは12.6 ± 3.7と明らかにFTDの方が点数が低く、カットオフ値を11にしたときの感度と特異度はそれぞれ81%と72%、正答率は78.9%であった。MMSEが24以上の初期の症例の場合、両者の鑑別のカットオフ値を12にしたときの感度は77%、特異度は87%であった。MCI を対象にした研究では{27866203}、ADの前段階とsubcortical ischemic vascular diseaseの前段階では、FABの合計値と語の流暢性(letter fluency)に有意な差が認められている。ただしカテゴリーにおける語の流暢性(category fluency)には有意差がなかった。

    ADとFTDにおけるFAB成績の差 {15262742}
    Stacks Image 10491
    血管型とAD型MCIにおけるFAB成績の差 {27866203}
    Stacks Image 10486
    ADとFTDにおけるFAB成績の差 {15262742}
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    血管型とAD型MCIにおけるFAB成績の差 {27866203}
    Stacks Image 6154
    26. Trail Making Test (TMT)

    TMTは米軍の心理学者によって開発され、容易に検査できることが特徴である。TMT-AとTMT-Bがあり、Aでは1から25までの数字を線で結び、Bでは1-あ-2-い...というように合計25個の数字と文字を交互に結んで行き、AとBそれぞれの時間を測定する。実際にはAの練習、Aの本番、Bの練習、Bの本番の順に試験を実施する。本試験では、視覚性注意、視覚探索機能、注意のほか、手の運動機能が影響する。AとBの比をとることによって、手の運動機能の影響を取り除き、主に前頭葉が関係する注意の転換機能を評価することができる。正常では1.2倍程度であるが、2倍を超える場合には前頭葉の機能障害が疑われる。豊倉の研究によると、TMT B/Aは年齢による有意な差は認められなかった。

    Stacks Image 10502
    TMT正常値
    Stacks Image 10497
    豊岡 穰 脳と精神の医学7, 1996
    Stacks Image 6175
    TMT正常値
    Stacks Image 6170
    豊岡 穰 脳と精神の医学7, 1996

    TMT-Aは選択性注意、TMT-Bは分配性注意の課題とされている。
    注意は、多くの情報の中から情報を選択する心的機能であり、脳の限られた処理資源を有効に活用するために、不要な情報には処理資源を割り当てず、必要な情報だけを優先的に処理するといった資源の最適化を行う情報の選択的処理機能である。一般に選択、持続、分配、転換に分類される。

    注意の4種類
    Stacks Image 10508

    TMT-Aは選択性注意、TMT-Bは分配性注意の課題とされている。
    注意は、多くの情報の中から情報を選択する心的機能であり、脳の限られた処理資源を有効に活用するために、不要な情報には処理資源を割り当てず、必要な情報だけを優先的に処理するといった資源の最適化を行う情報の選択的処理機能である。一般に選択、持続、分配、転換に分類される。

    注意の4種類
    Stacks Image 6181
    27. Stroop test

    John Ridley Stroopは米国の心理学者で、ストループテストは1935年に発表された。http://dx.doi.org/10.1037/h0054651

    A. 赤、青、緑、黄のそれぞれの文字(あか、あお、みどり、きいろ)が黒インクで書かれた4種類のカードのword reading (小児ではひらがなを用いる)。
    B. 赤、青、緑、黄色の丸が書かれた4種類のカードのcolor naming。
    C. 赤、青、緑、黄のそれぞれの文字が文字とは異なる色で書かれたカードのincongruent color naming。

    表示されたインクの色をできるだけ早く答えるのが課題となる。具体的な方法は色々あるが、例えばVictoria版では、A、B、Cそれぞれを24枚ずつ提示する方法がよく知られている。
    評価はそれぞれの所用時間、誤答数、Cの時間からAの時間を引いた値となる。失語や視空間の問題がなければ前頭葉、特に前頭葉の背内側に関係すると言われている。

    年齢別の各指標成績の平均と標準偏差 (平澤ら, https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn/41/6/41_426/_pdf/-char/ja)
    Stacks Image 10526
    Stacks Image 10515
    年齢別の各指標成績の平均と標準偏差
    (眞田ら, https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/1/10943/20160527185026227433/132_0063_0067.pdf)
    Stacks Image 10519

    A. 赤、青、緑、黄のそれぞれの文字(あか、あお、みどり、きいろ)が黒インクで書かれた4種類のカードのword reading (小児ではひらがなを用いる)。
    B. 赤、青、緑、黄色の丸が書かれた4種類のカードのcolor naming。
    C. 赤、青、緑、黄のそれぞれの文字が文字とは異なる色で書かれたカードのincongruent color naming。

    表示されたインクの色をできるだけ早く答えるのが課題となる。具体的な方法は色々あるが、例えばVictoria版では、A、B、Cそれぞれを24枚ずつ提示する方法がよく知られている。
    評価はそれぞれの所用時間、誤答数、Cの時間からAの時間を引いた値となる。失語や視空間の問題がなければ前頭葉、特に前頭葉の背内側に関係すると言われている。

    年齢別の各指標成績の平均と標準偏差 (平澤ら, https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn/41/6/41_426/_pdf/-char/ja)
    Stacks Image 8229
    Stacks Image 6193
    年齢別の各指標成績の平均と標準偏差
    (眞田ら, https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/1/10943/20160527185026227433/132_0063_0067.pdf)
    Stacks Image 8233
    28. 語流暢性テスト (Verbal Fluency Test)

    言語流暢性テストには、動物や植物の名前などの語想起を促すカテゴリー流暢性課題(Semantic/Category Fluency Test)と、「か」や「さ」などの頭文字より語想起を促す文字流暢性課題(Phonetic/Letter Fluency Test)があり、通常は60秒以内に想起される単語数を課題とする。課題の主な手順は、単語生成、作業記憶(ワーキングメモリ)、自己監視、言語発声の実行に関係し{9281831}{14642542}{9705059}、符号化や保持といった記憶プロセスは必要ないことから、前頭葉の機能を反映していると思われる。左背外側前頭前野、下前頭皮質、前帯状皮質がカテゴリーと文字流暢性の両方の単語生成に関与していることが示されている(Mitrushina-M, Handbook of Normative)。しかし、VFTでは、優位半球の側頭葉にプールされている語彙記憶へのアクセスも必要であり、脳の変化が前頭葉よりも側頭葉に優位に起こるアルツハイマー病において、進行度合いの評価にも用いられる{21297265}

    この2種類のVFTの違いを示すものとして、皮質局所病変患者のVFTのメタ分析研究では、文字流暢性課題は、前頭葉>側頭葉、左>右に対してより敏感であることが示されている。一方、側頭葉病変を持つ患者では、文字流暢性課題よりもカテゴリー流暢性課題の方がより大きな障害を示し、カテゴリーシステムの障害が実行機能障害よりも重要な決定要因であることが示唆されている{15178173}。また、Cambridge Semantic Batteryを用いた研究{16909626 }でも、軽度認知障害(MCI)患者はカテゴリー流暢性のみに有意な障害を示したが、軽度アルツハイマー病患者はさらに広い範囲の脳機能障害を反映する文字流暢性課題においても障害を示した。同様に、脳血流を測定することによって意味的流暢性と音韻的流暢性を直接比較した機能的PET研究により、下前頭皮質と側頭頭頂皮質はカテゴリー流暢性よりも文字的流暢性の時に多く活動し、一方、左側頭皮質は文字流暢性よりもカテゴリー流暢性の時に多く活動していることが示された{10928738}

    語流暢性課題別平均生成語数(標準偏差)
    Stacks Image 10532
    (伊藤恵美、言語流暢性検査に関する神経心理学的研究, 2006より)

    この2種類のVFTの違いを示すものとして、皮質局所病変患者のVFTのメタ分析研究では、文字流暢性課題は、前頭葉>側頭葉、左>右に対してより敏感であることが示されている。一方、側頭葉病変を持つ患者では、文字流暢性課題よりもカテゴリー流暢性課題の方がより大きな障害を示し、カテゴリーシステムの障害が実行機能障害よりも重要な決定要因であることが示唆されている{15178173}。また、Cambridge Semantic Batteryを用いた研究{16909626 }でも、軽度認知障害(MCI)患者はカテゴリー流暢性のみに有意な障害を示したが、軽度アルツハイマー病患者はさらに広い範囲の脳機能障害を反映する文字流暢性課題においても障害を示した。同様に、脳血流を測定することによって意味的流暢性と音韻的流暢性を直接比較した機能的PET研究により、下前頭皮質と側頭頭頂皮質はカテゴリー流暢性よりも文字的流暢性の時に多く活動し、一方、左側頭皮質は文字流暢性よりもカテゴリー流暢性の時に多く活動していることが示された{10928738}

    語流暢性課題別平均生成語数(標準偏差)
    Stacks Image 6214
    (伊藤恵美、言語流暢性検査に関する神経心理学的研究, 2006より)

    海馬がカテゴリー流暢性には関与するが文字流暢性には関与しないことを示唆する研究が数多くなされている。Gleissnerら{11292161}は、側頭葉てんかん患者の言語流暢性に海馬が関与していることを見いだした。この場合、左側頭葉に病変のある患者では、海馬病変の有無にかかわらず言語流暢性が損なわれていた。一方、右側頭葉に障害のある患者では、海馬の障害もある場合にのみ言語流暢性が損なわれていた。同様に、Pihlajamäkiら{10762158}は、衣類、食物、動物、植物などの典型的なカテゴリーの言語を生成する際に、海馬と後部海馬傍回を含む左側頭葉内側が活性化されることを観察した。これらの研究は、言語の連想検索に海馬のシステムが有用であることを示している。さらに、Martinら{11055252}は、側頭葉前部は背外側前頭前野との連結に関係しており、この領域の障害は語流暢性課題の成績に影響すると報告している。

    29. Iowa Gambling Task (IGT)

    判断(decision making)の機能評価を目的としている。前頭葉眼窩部の機能障害が反映されると考えられている。A、B、C、Dの4つのデッキにカ-ドが積まれており、このカ-ドを引いて賞金を稼ぐ課題。元金は2000ドルで、カ-ドは合計100回引くことができる。いくつかのカ-ドは賞金がもらえ、いくつは罰金を払う必要がある。デッキAとBには賞金は高いが罰金も高く、結果的には損をするようになっている。デッキCとDには賞金は低いが罰金も低く、結果的には得をするようになっている。評価は終了時の持ち金、カ-ドを引いた枚数で、(A+B)/(C+D)を計算して求める。検査の進行とともに修正される仮定を調べる目的で、20枚ごとに上記の比を計算することも多い。PC用のソフトも公開されている。

    30. Tower of Hanoi Puzzle (ハノイの塔)

    5つの円盤を指示された配置になるよう棒から棒に移し変える課題で、遂行機能としての問題解決能力の評価や手続き記憶検査として認知機能の獲得評価を調べる。

    ル-ルは2つで、
    ⅰ) 移動は1度に1枚ずつ
    ⅱ) 小さな円盤の上に大きな円盤は置けない。
    被検者には制限回数や制限時間は知らせないが、できるだけ少ない移動回数で行うよう指示する。問題の理解、解決方法の探索(先を見越して計画する)能力を評価することができる。また、繰り返して行うことによって、操作が上達する手続き記憶の評価も行える。
    評価にはGoel-Grafman法が使われることが多い。この場合、1課題の制限時間の設定は2分になる。

    • ResMov: 移動制限回数

    • ActMov: 実際に移動させた回数(制限移動回数内の時は制限移動回数とする)

    • NumErr: 大きなディスクを小さなディスクの上に置こうとした回数

    • NumRev:1施行前の逆操作(元の柱にディスクを戻した)回数

    MovLeft: 制限時間までに正しい位置にないディスクの数。完成している場合は0。

    Stacks Image 10541

    ル-ルは2つで、
    ⅰ) 移動は1度に1枚ずつ
    ⅱ) 小さな円盤の上に大きな円盤は置けない。
    被検者には制限回数や制限時間は知らせないが、できるだけ少ない移動回数で行うよう指示する。問題の理解、解決方法の探索(先を見越して計画する)能力を評価することができる。また、繰り返して行うことによって、操作が上達する手続き記憶の評価も行える。
    評価にはGoel-Grafman法が使われることが多い。この場合、1課題の制限時間の設定は2分になる。

    • ResMov: 移動制限回数

    • ActMov: 実際に移動させた回数(制限移動回数内の時は制限移動回数とする)

    • NumErr: 大きなディスクを小さなディスクの上に置こうとした回数

    • NumRev:1施行前の逆操作(元の柱にディスクを戻した)回数

    MovLeft: 制限時間までに正しい位置にないディスクの数。完成している場合は0。

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    Stacks Image 9832
    ここでspeedは全ての課題にかかった時間(1課題、最大120秒まで)で以下のように計算する。
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    RangeConstantは2000に設定。
    Stacks Image 6352
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    (平均=1114、標準偏差=254)

    健常者のスコアの平均値は1323±552.0 (20例、平均年齢43.5±13.0)
    31. Tower of London-Drexel University

    検者と被検者用にそれぞれ用意されたタワーボードがあり、それぞれ3本の柱と色の異なる3個のビーズ(赤、緑、青)が用意されている。被検者は検者が示すパターンになるように制限回数以内、かつ、1分間以内にビーズを移動するよう指示される。3本の柱はそれぞレビーズが3個、2個、1個までしか置けないようになっていること、移動は1度に1個ずつであることが条件となる。10パターン(4移動×2、5移動×3、6移動×3、7移動×2)が用意され、段階ごとに難しくなる。評価は出来た課題の数と時間を測定するが、表のような評価項目になっている。

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    32. Self-Rating Depression Scale (SDS)

    Duke大学の精神科医であるZung博士が考案した評価尺度。スクリ-ニング検査としてよく使われる。被験者本人に20項目の設問に答えてもらうので、特別な知識は必要としない。

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    https://www.researchgate.net/publication/315835059より(翻訳)
    33. Hamilton Depression Rating Scale (HAM-D)

     うつ病の重症度評価尺度として最もよく使われている。うつ病を診断するためのものではなく、うつ病を診断されている症例の重症度を示している。21項目の内、はじめの17項目で重症度を評価し、残りの4項目はうつ病の性質を示す尺度となる。HAM-Dには複数の改変版が存在する。抽出版であるHAMD-5、HAMD-6、拡張版であるHAMD-24など。改変版としては、Bech-Rafaelsen Melancholia Scale、Williams版、GRID HAMDなどがある。日本ではSequenced Treatment Alternatives to Receive Depression (STAR*D)版が出ている。

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    Stacks Image 9827

    HAM-Dでうつ病の診断はできないことに注意が必要。治療効果では7点以下が寛解の目安。17版の大まかな目安は以下の通り。
    正常 0〜7
    軽症 8〜13
    中等症 14〜18
    重症 19〜22
    最重症 23点以上

    34. 老年期うつ病評価尺度(GeriatricDepression Scale)

    高齢者のうつ尺度としてGeriatric Depression Scale (GDS)がYesavageらによって報告された{7183759}。初めは30項目であったが、現在では15項目の短縮版が使われている。

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    グレー枠の回答の数の合計:6(5)点以上がうつ傾向、11点以上がうつ状態
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    グレー枠の回答の数の合計:6(5)点以上がうつ傾向、11点以上がうつ状態
    35. Neuropsychiatric Inventory-Questionaire (NPI-Q)

    NPIは介護者などの情報によりBPSDを評価する尺度の1つで、妄想、幻覚、抑うつ状態、不安、多幸、無為、脱抑制、易刺激性、異常行動の10項目で評価する。介護者の負担度を評価に加えたNPI-D、10項目に食行動の異常を加え施設職員を対象としたNPI-NH(nurcing home)、10項目に食行動の異常と睡眠異常を加えた12項目版NPI、これを質問紙で答えてもらうアンケ-ト形式のNPI-Qなどがある。質問形式のNPIは情報提供者が質問を理解できないときや、あやふやな答えをしているときに確認するなどができるが、15分程度時間が必要であるのに対し、NPI-Qは5分程度で終了するメリットがある。NPIやNPI-Qの使用にあたっては、Dr. Jeffrey L. Cummingsの許可が必要になる。

    NPI-Qの内容
    A: SEVERITY; 症状の重症度(発症時と比較してどのくらい悪化しているか)
     1 軽度
     2 中等度
     3 重度

    B: DISTRESS; 介護者がどのていど負担を感じているか
     0 全くなし
     1 手はかからず、ストレスなし
     2 手はかかるが、ストレスは軽い
     3 介護はいつも容易ではなく、中等度のストレスを感じる
     4 介護に困難さを感じ、強いストレスを感じる
     5 介護が全くできないほど、ひどいストレスがある


    12項目で該当する症状がない場合は0として答える必要はない。該当するものがある場合は、Severity(A)と介護者の負担度(B)の程度を選択してもらう。


     妄想:もの取られ妄想や被害妄想があるか?
     幻覚:幻視、幻聴などがあるか?
     興奮、攻撃的な態度:介護に対して抵抗するか?介護がむずかしいか?
     抑欝、気分変調:患者は悲しそうにみえるか?抑欝気分を訴えるか?
     不安:介護者がいないと悲しそうにするか?過呼吸、ため息、リラックスできない、緊張しているような症状はないか?
     多幸:過剰に幸福そうにしていないか?
     無為(アパシ-):何事にも興味を示さない、自発的になにもしないことはないか?
     脱抑制:衝動的に突然知らない人に話しかる、人の気持ちを傷つけるような行為はないか?
     易刺激性:気難しく、イライラしていないか?
     行動異常:徘徊、ボタンや紐をいじるなど無目的な繰り返しの動作はないか。
     睡眠異常:夜間介護者を起こさないか?異常に早い時間に起き出さないか?日中にうとうとしていることが多くないか?
     食行動異常:食事による体重の変動はないか?嗜好の異常な変化はないか?

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     妄想:もの取られ妄想や被害妄想があるか?
     幻覚:幻視、幻聴などがあるか?
     興奮、攻撃的な態度:介護に対して抵抗するか?介護がむずかしいか?
     抑欝、気分変調:患者は悲しそうにみえるか?抑欝気分を訴えるか?
     不安:介護者がいないと悲しそうにするか?過呼吸、ため息、リラックスできない、緊張しているような症状はないか?
     多幸:過剰に幸福そうにしていないか?
     無為(アパシ-):何事にも興味を示さない、自発的になにもしないことはないか?
     脱抑制:衝動的に突然知らない人に話しかる、人の気持ちを傷つけるような行為はないか?
     易刺激性:気難しく、イライラしていないか?
     行動異常:徘徊、ボタンや紐をいじるなど無目的な繰り返しの動作はないか。
     睡眠異常:夜間介護者を起こさないか?異常に早い時間に起き出さないか?日中にうとうとしていることが多くないか?
     食行動異常:食事による体重の変動はないか?嗜好の異常な変化はないか?

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    36. Clinical Dementia Rating (CDR)

    Clinical dementia rating (CDR)は、認知症患者の認知および機能的パフォーマンスを評価するもので、ワシントン大学医学部のCharles HughesLeonard BergJohn C. Morrisらによって開発された。認知症の早期かつ正確な診断と病期分類は、初期段階で治療の適応決定や抗認知症薬の効果判定に不可欠であり、CDRはアルツハイマー病関連の疾患の研究で幅広く採用されている。CDRを完成するためには、患者と信頼できる情報提供者または付随情報源(例えば、家族)の双方から、あらかじめ決められた項目に沿った情報収集と、必要に応じて追加の情報を収集する必要がある(半構造化面接)。このため、この評価法の実施にはそれなりの時間(4590)と経験が必要とされ、訓練を受けた医師や看護師、臨床心理士などが必要となる。さらに、レカネマブやドナネマブへの臨床的な評価にCDRが必要となっており、忙しい臨床現場で正確なCDR評価を効率よく運用する必要に迫られている。

    CDRはアルツハイマー病の患者を対象とした前向き研究で、1982年に初めて導入され{7104545)、その後、Consortium to Establish a Registry for Alzheimer's DiseaseCERAD)にも採用された{2771064}CERADでは、広く離れたセンターで確実に適用できるアルツハイマー病の標準的な診断バッテリーの1つとして使われたが、現在ではアルツハイマー病以外の認知症疾患の重症度を評価する際にも使用されることになってきた。点数をつけるにあたり、被験者の生活状況を把握している介護者からの情報が不可欠で、独身高齢者の場合には評価が難しい場合がある。本来は観察式の評価法ではあるが、時に患者本人に検査を実施して確かめることも必要となる。このように、介護者にわからないことは検査者が直接被験者をテストして確かめる必要があるため、それなりに時間がかかる。日本では目黒や杉下がCDRの評価法を紹介している。

    CDRの中で判断力と問題解決は、簡単な検査が必要となることがある。表にもあるようにCDRが1点の場合は、類似性や差異の質問には正解できないものの、社会的判断は比較的保たれる程度となる。具体的な方法として、目黒や杉下が推奨している検査法を記載する。

    目黒法

    1. これから2つの言葉を言いますが、それらの違いを教えてください。例えば、砂糖と酢はどちらも調味料ですが、甘いと酸っぱいという味の違いがあります。
    川と運河(用水路)の違いは何ですか? (答え)天然(自然)と人工物 (配点なし)

    2. これから2つの言葉を言います。今度はそれらの似たところ、共通することを答えてください。
    ニンジンとジャガイモ (答え)野菜(2点)  食べられるもの、植物など(1点)

    3. これから、ある出来事が起きたらどうするか尋ねますので、適切だと思う行動を答えてください(社会的判断)。

    • 近所の家が火事になっているのを見つけたらどうしますか?

    • 消防署や警察に通報(1)、近所の人に知らせる(1)、その家の人を助ける(1)、火を消す(1)

    • 借りてきた傘をなくしたらどうしますか?

    • 弁償する(1)、知らせて謝罪する(1)

    • 郵便の封筒を拾い、そこには宛名が書かれていて、切手も貼ってあります。あなたはこの封筒をどうしますか?

    • 投函する、郵便局に届ける (2) 、警察に届ける、落とし主を探す(1)


    CDRの目安;満点(6)=0、5点=0.5、3〜4点=1、1〜2点=2

    杉下法(国際法)

    1. 今から言う2つの言葉の共通点を答えてください。例えば、鉛筆とペンの共通点は? と聞かれたら、書く道具、といった具合です。

    • カブと白菜

      野菜(0):食品、生き物、料理できる、など(1):誤り、答えられない(2)

    • 机と本箱

      家具、事務用品(0):木製、足がある(1): 誤り、答えられない(2)

    2. 今から言う2つの言葉の相違点を答えてください。例えば、砂糖と酢

    • 嘘と間違い 

      嘘は故意にするもの、間違いは意図しないもの(0):嘘は悪いもの(1)

    • 川と運河  

      自然なものと人工的なもの(0)


    3. 今まで来たことのない街に来たとします。あなたが会いたいと思っている友達のいる場所を、あなたはどうやって見つけますか?

      友人に電話してみる、電話帳で探してみる、市役所に行って住所を調べる(0)

      警察に問い合わせる、電話局の番号案内に住所を聞く(1)


     CDRは0から3までの5段階(0.5があるため)評価であるが、6項目それぞれの点数を参考に全体としての点数をつける必要がある。この付け方は少し複雑であるので注意が必要である。まず、上から順番に6つのカテゴリ-(記憶、見当識、判断と問題解決、社会適応、家庭状況および趣味や関心、介護状況)を5段階に評価する。その合計値(Sum of Boxes)をCDR-SBとして算出する場合もあるが、CDRのスコアとしては以下のように算出する。

    • 6つのカテゴリ-のそれぞれの評価において、障害の軽い方から重い方へ×1から×6まで順位付けを行う。

    • 同じ重度の場合は、カテゴリ-の順番が上のものを先に付ける。

    • CDRの点数は×3または×4の重症度とするが、この2つが異なる場合は記憶の障害度に近い方を選択する。

    • ただし以下の3つの場合はそれぞれ重症度を変更する

    記憶 = 0で、上記の方法でCDR > 0.5の場合は0.5
    記憶 = 0.5で、上記の方法でCDR > 1の場合は1
    記憶 が0.5以上で、上記の方法でCDR = 0の場合は0.5

    Stacks Image 1841
    この表のダウンロードはこちらから
    CDR 配点例

    CDRの評価法の特徴は、記憶障害に重点を置いたグローバルスコア(GS)の計算法の存在である。計算法はやや複雑であり、認知症の症状に関する知識の蓄積と多様性に応じて質問項目の内容とGSの計算方法に変更が加えられており{8232972}どの計算法に従ってGSを算出したか明記しておく必要がある。Morrisらが提唱している新しい計算法{8232972}では、これまでのルールではカバーしきれなかったスコアの分布に対応できるようになっている。Morrisらの方法では、スコアが一様に分布していない症例の場合、患者の重症度と矛盾するようなCDR-GSが生成されることがある。このような状況では、カテゴリースコアの1つをわずかに変化させただけで、CDR-GSが異常に大きく変化したり、あるいはCDR-GSが逆方向に変化したりすることがある。この問題を解決する目的で、Gelbらは、これまでとは全く異なる計算方法を提唱している{8305188}
     
    CDR-GSの計算にネット上で計算機を使う場合、計算機によってGSの結果が異なることに注意する必要がある。現在、CDR-GSの計算機として2つが公開されている。1つはワシントン大学のNational Alzheimer’s Coordinating Center (NACC)が公表しているもので(https://naccdata.org/data-collection/tools-calculators/cdr)1993年にMorrisらが発表した論文の計算方法に基づいている{8232972}。もう1つはHughesが公開している計算機で、MDCalcに掲載されている(https://www.mdcalc.com/calc/10160/clinical-dementia-rating-cdr-scale)。気をつけなくてはいけないことに、スコアのパターンによっては、これら2つの計算機の結果に違いがあることと、NACCの計算機が必ずしもMorrisが発表している”assignment of CDR rating”に従った結果になっていないことである。このことが、実際の臨床にどの程度影響するかは不明であるが(実際には起こらないことかも知れない)、公開されている計算機である以上、その中のアルゴリズムがどのように作動するかは気になる。本稿では、MorrisGelbそれぞれのCDR-GSの計算ルールをまとめるとともに、公開されている2つの計算機の矛盾点を指摘する。さらに我々は、Morrisの計算法とGelbの計算法に忠実に従った計算機を新たに開発したので紹介する(https://www.sigurs.co.jp/cdr/calculator/)
     

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    Stacks Image 10555
    Stacks Image 10013
    Stacks Image 10015
    A
    Stacks Image 10610
    D
    Stacks Image 10614
    B
    Stacks Image 10601
    E
    Stacks Image 10605
    C
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    F
    Stacks Image 10596
    A
    Stacks Image 10582
    D
    Stacks Image 10586
    B
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    E
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    C
    Stacks Image 10564
    F
    Stacks Image 10568

    答え;A=1、B=0.5、C=1、D=0.5、E=1、F=0.5

    実際には起こり難いスコア配列のパターン例であるが、計算機の違いを理解するため、現在公表されている計算機がどのように作動するかを例示する。
    例1:Morrisのルールでは32のルールが適応されCDR=1になりそうであるが、0が3つあるので、CDR=0.5となる。NACCの計算機では1MDCalcの計算機では0.5と表出される。

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    2M=0のとき、MorrisのルールではCDR-GS0または0.5にしかならない。二次的カテゴリーの値が0.5以上のものが2つ以上の場合はCDR=0.5となる。この例は0.5になるべきであるが、NACCの計算機ではCDR=1となる。MDCalcの計算機では0.5となっている。

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    3M=0.5の場合、CDR0になることはなく、0.51にしかならない。
    M=0.5のとき、他のカテゴリのうち少なくとも3つに1以上の得点があれば、CDR=1となる。この例ではCDR=1のはずであるが、NACCの計算機ではCDR=2となる。MDCalcでは1となっている。

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    Stacks Image 10063

    NACCの計算機は必ずしもMorrisの計算法に従っていない。我々の検討では、12500パターンのうち291パターンに乖離が認められた。参考までに、GelbMorrisの違いは4423パターンとなった。現在臨床で幅広く利用されているのはMorrisの計算法と思われるが、計算機である以上、決められたルールに従ったアルゴリズムで作動することが望ましい。そこで、Morrisの計算法に従った計算機と、Gelbの計算法に従った計算機を作成した(https://www.sigurs.co.jp/cdr/calculator/)。この計算機では、NACCの計算機と異なるスコアになる場合には、注意が喚起され、参考までに、NACCの計算機による結果も同時に表示されるようになっている。

    CDR 評価における注意点

    これまではCDR-GSの計算方法について述べてきたが、ここではCDRを実施する際の課題について考察する。


    )  CDR-GS0.5~1の場合は検者間の一致率が低い

    Rockwoodらは、他施設共同臨床試験におけるCDRの評価者間の信頼性を検討した{10811551}7施設で12名の臨床医がワシントン大学で作成されたトレーニングビデオとミーティングで訓練を受けた。結果(表1)、全体のカッパ係数は0.62と良好ではあったが、MCIに多いCDR=0.5のカッパ係数は0.33と信頼性は低い結果であった。記憶の項目では、0.5と1がそれぞれ0.240.38で一致率が低かった。CDR0から2の全例でみると、記憶、判断、社会活動項目の一致率が低かった。この中で特に一致率が低かったのは、CDR1の患者における判断項目の0.06であった。Morrisらの報告{9191756}では、CDR0.5の疑わしい認知症とCDR0の正常老化との区別が他よりも困難であった。MCIの被験者においては、被験者の機能状態に関する客観的な認知検査の結果と情報提供者から得られた情報との間に解離が起きやすいことも一因と思われる{11889240}

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    )  CDR-GS0.5~1の場合は検者間の一致率が低い

    Rockwoodらは、他施設共同臨床試験におけるCDRの評価者間の信頼性を検討した{10811551}7施設で12名の臨床医がワシントン大学で作成されたトレーニングビデオとミーティングで訓練を受けた。結果(表1)、全体のカッパ係数は0.62と良好ではあったが、MCIに多いCDR=0.5のカッパ係数は0.33と信頼性は低い結果であった。記憶の項目では、0.5と1がそれぞれ0.240.38で一致率が低かった。CDR0から2の全例でみると、記憶、判断、社会活動項目の一致率が低かった。この中で特に一致率が低かったのは、CDR1の患者における判断項目の0.06であった。Morrisらの報告{9191756}では、CDR0.5の疑わしい認知症とCDR0の正常老化との区別が他よりも困難であった。MCIの被験者においては、被験者の機能状態に関する客観的な認知検査の結果と情報提供者から得られた情報との間に解離が起きやすいことも一因と思われる{11889240}

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    )  軽症例における記憶障害の評価

    記憶に問題がある患者の場合、アルツハイマー病では認知症に進行すると記憶に関する本人の認識が低下することはよく経験する。また、記憶の問題が正常の老化の範囲であるかどうかで家族の中でも意見が分かれることもしばしばある。このような場合、診察室での記憶テストが参考になるが、ウェクスラー記憶検査は時間がかかり運用が難しい場合がある。Free and Cued Selective Reminding Test (FCSRT)検査は、比較的短時間で遂行できる記憶検査である。また、この検査から得られるStages of Objective Memory Impairment (SOMI)は、一見認知機能が正常な被験者における軽微な認知機能障害を特定し、その被験者たちが認知機能障害(CDR0.5)に移行するリスクを予測することが可能であった{37076305}他のほとんどの記憶テストとは異なり、FCSRTは注意と認知処理を制御するよう設計されているため、加齢に伴う記憶力の低下とアルツハイマー病発症前の記憶力の低下を鑑別する能力が高い{20683186}。手がかり再生は、多くの健康な高齢者にみられる軽度の想起障害を改善するが{9408795}、認知症患者にはわずかな効果しかない{9375233}CDR-GSSOMIとの関係であるが、CDR-GS069人の参加者のうち、53(77%)は何らかの貯蔵または検索の障害があったのに対し、CDR 0.5の被験者の88(93%)は、記憶または検索の障害を両方とも有しており、CDRスコアが1.0の被験者の81(99%)も同様であった{33492286}。これらのことから、FCSRTは、CDR=0.5以上の記憶障害があるかを鑑別するのに有効な検査と思われる。SOMIは、AD連続体におけるエピソード記憶障害の神経病理学的に検証された段階分類システムを提供しており{33492286}、アミロイドを標的とした治療の適応を考慮する上でも有用と思われる。

     
    )  判断と問題解決能力の評価
    判断とは、実行可能な選択肢を特定し、その中からどれを選択するのが個人にとって最も好ましいかを決める作業である。問題解決とは、実行可能な選択肢を特定するために、さまざまな選択肢について確率的な予測を行う作業である。両者は密接に関連しており、前頭葉で行われる思考プロセスに依存しており、加齢とともに低下することが示されている{16895857} 。問題解決能力を測定するパフォーマンスベースの尺度としては、Everyday Problems Test (EPT)が知られている。判断と問題解決能力は、Instrumental Activities of Daily Living(IADLs)とも関係しており、CDRでは情報提供者から得られた情報を参考にして判断することになる。
    判断と問題解決能力の評価は、個人が置かれてきた環境や教育、民族性など、考慮すべきことが数多くあるため、定められた課題から評価するのは難しい。
    CDR調査表では、「見知らぬ街に到着した際、会いたい友人をどのようにして見つけますか?」という問題が設定されている。単純に「友人の連絡先を調べるにはどうしますか?」ではなく、「見知らぬ街に到着した際」という条件がつけられているため、どのような目的があって見知らぬ街に到着したのか、なぜその友人に会いたいのか、どのような関係の友人なのか、などによって社会的判断も変わってくるはずである。CDRが開発された時代には、スマホやインターネットがなく、現在ほど個人情報の管理が厳格化されていなかったと思われ、おそらく公衆ボックスの電話帳から住所を調べることを想定して作成された設問と思われる。著者らは、この設問における判断力の評価は難しいと感じている。
    CDRでは社会的判断力を1つの指標として重視している。社会とは人と人との関係であり、社会的判断とは身近な人から一般的他者までを考慮しながら最適な選択肢を決めることである。最適とされる選択肢は、個人それぞれによって多様な考えに基づくものであるが、社会の中でより多くの人が最適と考える選択肢は、ある意味で社会全体にとって妥当な選択肢と言えるため、社会的判断の指標となり得る。社会的判断を評価するためには、被験者の時代ごとにあった問題を設定し、構造化したいくつかの選択肢のなかで、多数の人の意見の分布に重みづけをした解析が有用と思われる。

    簡易検査 (Bridge-C)

    記憶機能の低下の評価は、問診よりも記憶力テストを実施する方が観察者間での一致が得られやすい。また、MMSEの3つの単語の記憶検査よりも、FSCRT検査の方が感度•汎用性ともに高い。そこで我々は、FCSRTの簡易版を作成した。また、前頭葉機能の評価はFABを参考にしたり、日常生活に関係した設問から評価した方が観察者間での一致が得られやすい。どのような判断が良いかは人それぞれぼ環境や価値観によっても異なるはずであり、答えは1つではないことも多い。そこで、われわれは設問ごとに選択された答えの多かったものに重みづけをして判断力をAIに判定させるなどを試みた。本来のCDR検査を再現できる簡易版として「Bridge-C」として試験的に運用している(https://cdr-test.sigurs.co.jp/cdr/)。検査の結果は、最終的には検者が修正して評価できるシステムになっている。

    37. Functional Assessment Staging (FAST)

    ADの病期(重症度)をADLの障害の程度によって7段階に分類する。FASTはBrief Cognitive Rating Scale(BCRS)とGlobal Deterioration scale (GDS)に基づいて構成された。

    Stacks Image 6224
    Stacks Image 9756
    *MMSEは目安

    参考文献
    椎野顯彦、知っているようで知らない認知症の常識非常識、認知機能評価、脳神経外科速報 vol. 29 (9), 2019

    専門医のための認知症テキスト

    滋賀医科大学
    Molecular Neuroscience Research Center
    認知症指導医、脳神経外科専門医
    椎野顯彦, MD., PhD.
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